煉獄杏寿郎の歪んだ愛

愛32 ページ32

リビング、寝室、トイレ、洗面所、台所。




一人暮らしには少し広すぎるのではという部屋に越した。





家具なんかは槇寿郎さんが置いといてくれたらしくリビングの大きなふかふかのソファに座りテレビを付ける。





テレビでは親が子供を虐待していた事が放送されていて、残念ながら子供は亡くなったらしい。






思わず自分と重ね、テレビを消し天井を眺める。









昨日から杏寿郎に会っていない。



こんな事は初めてだった。







私が一人暮らしをすると知ったら杏寿郎はどうするのだろう。







怒るのだろうか。




それは嫌だな。


殴られてしまう。









だが、杏寿郎は私の期待を鮮やかに裏切った。








学校で会っても特に何もしてこない。




家に押しかけてこない。









何もされないまま１週間が経った。





そう、１週間何もされなかったのだ。







こんな事は久しぶりなので困惑する。





いや、これが普通なのだが私の普通が変わってしまったので驚いてしまった。







このまま何もされずに過ごせるんじゃと思った。









だが、やはりそうはならない。









『……あ。』


杏「ちゃんと確認してから扉を開けたか！一人暮らしなのだからしっかりしないさい！！」






夜、インターホンがなり特に確認もせず扉を開けたことを後悔した。





学校と変わらない話し方。




驚いている私を引き摺りそのまま家の中に入られる。








どうしよう。





多分、怒っている。





杏寿郎はかなり頭にきている時は学校の時のような態度を取る。







杏「久しぶりだな。」






いつもの、あの雰囲気に変わる。




いつもはこんなに怖くなかったのに、何故か体が震えた。






杏「明日は休みだ。ゆっくり出来るな。」







杏寿郎が目を細め静かに微笑む。









後ろのカチャン、という鍵が締まる音が死刑宣告のように感じた。

愛33→←愛31

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す