高熱 ページ43
勝利side
北山「ちょ、どうしたどうした」
勝「……ぅぅっ…ッ…」
いきなり泣き始めた俺の姿に、びっくりして狼狽えはじめる北山先輩。心配をかけないように、なんでもないんですと早く言ってしまいたいのに、嗚咽に掻き消されて言葉を紡ぐことが出来ない
北山「…悪い、ちょっと触るな」
暫くそうしていると、何かを察した北山先輩がおれのおでこにそっと右手を添える
北山「……勝利、こりゃダメだ
働いてる場合じゃねえぞ」
添えた右手越しに体温を感じ取ったらしい北山先輩が驚きの声をあげる
熱があることは自分でも自覚しているところではあったが、恐らく北山先輩の反応から察するに、自分が思っている以上に体温は上昇してしまっているのだろう
北山「兄貴たちに迎えに来てもらえよ
俺から連絡してやるし……健人か、風磨か、どっちがいい?」
専科も違うし、北山先輩と健人兄ちゃん、風磨兄ちゃんは直接の関わりはないが、こういう時ナチュラルに呼び捨てにされるから、なんだか少しむずがゆい
まるで北山先輩にとっては、兄ちゃんたちも勝手知ったる後輩たちと思われているみたいで
知ってくれていることが嬉しいような、恥ずかしいような、何とも言えない照れ臭さがある
健「勝利〜今日は午後休で帰るぞ〜!」
そんなことをぼんやりと考えていると、いつも忙しく脳神経外科病棟を走り回っているはずの健人兄ちゃんが、こちらにひらひらと手を振りながら歩いてくる
ゆっくり医局で過ごしている姿を見るのすら久し振りで、思わず目を見開いて凝視してしまった
勝「え、なんで?…なんで健人兄ちゃんがここにいるの…?」
健「いや俺も医者だから、出入りくらいするよ
ってそんなことを言いに来たんじゃなくて!
ほら帰るぞ、勝利」
勝「え、え??」
仕事中に健人兄ちゃんに遭遇することも、帰ろうなんて誘われることも、普段では絶対にないシチュエーションすぎて、熱に浮かされた頭ではいまいち目の前の情報を処理しきれない
健「勝利朝から熱あるだろ
有給も消化しなきゃいけないし、体調悪い時くらい正当な理由使って休もうぜ」
勝「いやでもまだ仕事が……」
北山「ないない、もう帰ってよし!
健人、こいつのことゆっくり休ませといて」
健「あ、いつも勝利がお世話になってます北山先生
了解です、任せてください!」
当事者の俺は置いてきぼりで進む会話
結局あれよあれよと言う間に、俺は健人兄ちゃんに付き添われて半休で帰宅することになった
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紫苑(プロフ) - 紗瑛さん» お返事遅くなり申し訳ございません。嬉しいお言葉ありがとうございます。更新頑張ります! (2021年8月18日 19時) (レス) id: 39722e53c4 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - 空楽さん» お返事遅くなり申し訳ございません。そのように言っていただけて光栄です!8月後半は更新頑張りますのでまた呼んでいただけますと幸いです! (2021年8月18日 19時) (レス) id: 39722e53c4 (このIDを非表示/違反報告)
紗瑛 - 更新楽しみにしています! (2021年8月12日 21時) (レス) id: 2dcb5022ff (このIDを非表示/違反報告)
空楽 - 更新楽しみにしてます! (2021年8月7日 1時) (レス) id: 86d36c49a2 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - SZ*青薔薇さん» いつもコメントありがとうございます!共感して頂けて嬉しいです!笑 青薔薇さんの作品もいつも楽しみにしています!これからも応援してます! (2021年8月2日 0時) (レス) id: 39722e53c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫苑 | 作成日時:2021年7月3日 2時