マールブルグ病 ページ33
S.Mside
「……そう……聡！」
ん？
なんだか遠くから僕を呼ぶ声がする
よく知っているような声……だけど健人兄ちゃんでも風磨兄ちゃんでも、勝利でもマリウスでもない
…これは誰の声？
僕はそれを確かめるために、まだ深い眠気に引っ張られている意識を無理やり覚醒させる
北斗「聡、起きて」
するとそこに見えたのは、いつもお世話になっている先輩の姿
聡「……っ！北斗先輩？！」
意外な人物の登場に思わず素っ頓狂な声が漏れる
北斗「急に起こして悪いな。ちょっと話したいことあってさ、少しだけ付き合ってくれないか？」
聡「え……」
思わず手を握っている健人兄ちゃんの方を見る
だけど変わらず目は閉じられたままで
北斗「すぐに戻る、何かあったらちゃんと勝利やマリウスにも連絡入れてもらうようにするから」
そんな僕の不安を察してか、すかさずフォローを入れる北斗先輩
本当は一秒たりとも離れたくはないけれど、北斗先輩の表情や声からも僕への心配が痛いくらいに伝わってきて、流石にそれを無視することは出来ず、僕は意を決して先輩の後に着いて行った
辿り着いたのは灯りも殆ど消された昼間外来の待合室
いつも僕たちが働く救外にも繋がっているだだっ広いこの場所が、今は人の気配もなくとても寂しい場所に思えた
北斗「聡はさ、なんで俺たちの配属って救外だったんだろって、たまに思う時ないか？」
そこに設置された自販機で買ったカフェオレを僕に差し出しながら、北斗先輩が言葉を続ける
北斗「どのチームも大変なのは一緒だし、責任も等しく重いのは大前提なんだけど、その前提の上で救外って場所は特別壮絶というか…どんな症状の人が運ばれてくるかわからない怖さ、自分のキャパシティを超えてくような怖さがあるなって俺は思うんだよね」
聡「……っ」
北斗先輩の言葉には同意しかなかった
僕も毎日怖くて、不安だらけだから
北斗「俺が新人の時なんて、希望の配属先でもなかったから毎日ついていくだけで精一杯でさ、失敗ばっかで、先輩にもめちゃくちゃ怒られてたし」
聡「北斗先輩……」
北斗「足がすくんで動かない経験を何度もしたよ。パニックになって救急カート倒したり、違う点滴持って行ってドクターにブチ切れられたり。向いてないのかもしれないなんて、もう何回思ったかわからない」
聡「……っ」
北斗「…だから俺は、今朝の聡の姿を見て、本当にすげぇなって思ったんだよ」
聡「………え？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 236人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「家族」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紫苑(プロフ) - 紗瑛さん» お返事遅くなり申し訳ございません。嬉しいお言葉ありがとうございます。更新頑張ります！ (2021年8月18日 19時) (
レス) id: 39722e53c4 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - 空楽さん» お返事遅くなり申し訳ございません。そのように言っていただけて光栄です！8月後半は更新頑張りますのでまた呼んでいただけますと幸いです！ (2021年8月18日 19時) (レス) id: 39722e53c4 (このIDを非表示/違反報告)
紗瑛 - 更新楽しみにしています！ (2021年8月12日 21時) (レス) id: 2dcb5022ff (このIDを非表示/違反報告)
空楽 - 更新楽しみにしてます！ (2021年8月7日 1時) (レス) id: 86d36c49a2 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - SZ*青薔薇さん» いつもコメントありがとうございます！共感して頂けて嬉しいです！笑 青薔薇さんの作品もいつも楽しみにしています！これからも応援してます！ (2021年8月2日 0時) (レス) id: 39722e53c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫苑 | 作成日時：2021年7月3日 2時
