風邪 ページ22
S.Sside
勝「んぅっ……」
唸りながら目を覚ますと、自分の身体が熱をもっていて、しかも何だか重たいことに気付く
気怠くて起き上がる気にもなれずに視線だけ動かして、周りの景色からここが自分の部屋だと気付く
勝「……あれ…？」
おかしいな…今日はオペ前の患者さんの回診に絶対に出席したくて病院には行ったはずだし、最後に覚えている光景も岸と医局で話しているところだった
自力で帰ってきた記憶もないのに…
そう冴えない頭でぐるぐると思考を巡らせていると、ガチャリと控えめに部屋のドアが開いた
健「…あ、起きた？」
勝「……健人兄ちゃん」
ドアから顔を覗かせたのは小さなお盆を持った健人兄ちゃん。そのお盆の上にはポカリスエットの入ったペットボトルとか、冷えピタとか、体温計が乗っていて、なんとなく自分が風邪を引いているんだということを自覚した
健「ごめんな、勝利」
勝「…え、何が？」
健人兄ちゃんから発せられたのは予想外の言葉
唐突に謝られて、俺は話が全然見えない
健「いや、俺が仕事行っていいよなんて言わなかったら、勝利こんな熱出て苦しい思いしなくて済んだのにって思ってさ……ごめんな、俺が長男なのに、家族に対して一番責任があるのに」
勝「…っ」
言われて、頭を思いっきり殴られたような、目が覚めるような衝撃をがした
そうだった、うちの兄弟はみんな、誰かに何か起きた時、その当人を責めるでも、周りの環境を責めるでもなく、まず自分を責めるような優しい人たちだった
思い出して、そして後悔が襲う
こんなにも弟に思いの兄を騙してまで強行してしまったこと、結果的にそれで自分がダウンして、兄を悲しませてしまったこと
……ダメだな、今日は後悔してばっかりの一日だ
勝「違うんだ、俺の方こそごめん……健人兄ちゃんはちゃんと止めようとしてくれたのに、勝手なことしちゃってさ」
健「…勝利」
勝「結局ね、診察は出来たけど、熱のせいで俺ずっと上の空みたいになっちゃってさ、余計彼女を不安にさせちゃったんだ」
健「…」
勝「健人兄ちゃんに言われたこと、ちゃんと聞いておけばよかったってすごく後悔したよ……健人兄ちゃんはそういうことも全部分かってたから、あんなに行かせるか頭を悩ませてくれたんでしょ？」
健「勝利……」
勝「医者としても、人間としても、まだまだ子供すぎる自分が嫌になる…っ…」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 236人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「家族」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紫苑(プロフ) - 紗瑛さん» お返事遅くなり申し訳ございません。嬉しいお言葉ありがとうございます。更新頑張ります！ (2021年8月18日 19時) (
レス) id: 39722e53c4 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - 空楽さん» お返事遅くなり申し訳ございません。そのように言っていただけて光栄です！8月後半は更新頑張りますのでまた呼んでいただけますと幸いです！ (2021年8月18日 19時) (レス) id: 39722e53c4 (このIDを非表示/違反報告)
紗瑛 - 更新楽しみにしています！ (2021年8月12日 21時) (レス) id: 2dcb5022ff (このIDを非表示/違反報告)
空楽 - 更新楽しみにしてます！ (2021年8月7日 1時) (レス) id: 86d36c49a2 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - SZ*青薔薇さん» いつもコメントありがとうございます！共感して頂けて嬉しいです！笑 青薔薇さんの作品もいつも楽しみにしています！これからも応援してます！ (2021年8月2日 0時) (レス) id: 39722e53c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫苑 | 作成日時：2021年7月3日 2時
