七色幸せ笑話【短編集】 (ページ2)

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私が、渋谷くんを知ったのは、高3に進級してからの事

……いや。“渋谷すばる”という存在は、知っていた

私が通う高校は、いわゆる進学校というやつで、卒業後の進路は、殆どの生徒が有名大学に一発合格

かくいう私も、最近提出した志望校の調査票には、誰もが知る有名私立大学を記入した

そんな、勉強が趣味みたいな子達が集まる中、目立っていたのが、渋谷くんだった

この高校に合格したって事は、元々、頭は良いはずなのに、授業中は殆ど寝てて、真面目に出るのは音楽くらい

1年 2年と、進級できるギリギリの単位を取って、3年生まで上がってきたらしい

他校の生徒とバンドを組んでいて、勉強よりも音楽命。そんなバンド仲間と、毎夜女の子と遊んでるとか……

先生達がとにかく手を焼いている生徒…らしい

一度も、渋谷くんと同じクラスになった事のない私が知ってるのは、この程度のウワサ話だけ

そして、高校生活最後の年。私の隣の席には……

渋谷くんがいた

机に伏せたまま、微動だにしない渋谷くん

“おはよう”って、声でもかけてみようかな？

意を決して、す～っと息を吸い込んだら

「原田さん」

声をかけてきたのは、クラスメイトの木下くん

木下くんは、毎回定期テストで学年トップに輝く秀才くん

「いやぁ～。原田さんと同じクラスになれて、光栄だよ」

「あぁ……」

成績が良いのを鼻にかけて、周りの子達を見下したものの言い方

どちらかといえば、苦手なタイプだ

「このクラスってさ？成績優秀な子が多いよね？」

「そう？私、あんまわかんないけど…」

「そうなんだ。あぁ～っ、そっか。だからかぁ」

「何が？」

「ほら、このクラス学年最下位いるでしょ？だから、他の生徒で点数取らないと、クラスの平均点悪くなるからさ」

「最下位って、誰？」

「そりゃあ……ねぇ？」

木下くんの視線は、真っ直ぐ渋谷くんに注がれていて

「なんで、そんな事わかるの？」

それが、なんだか自分のことのように悔しかった

「なんで渋谷くんが学年最下位だって、木下くんにわかるの？」

「毎年、ギリギリで進級してるって聞くし、そんなウワサが立ってるの、彼だけだし」

「そんなの、ただのウワサでしょ？」

「火のないところに煙は立たないって言うだろ？原田さんみたいな賢い人が、こんな奴の肩持つなんて、思ってもなかったよ」

カッチーーーン！