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第四十五話 閉じ込めた想い ページ47

――「し、失礼します……っ」


そう言って、彼女は突き放したままの私を見捨てた。


――さすがに、子ども扱いし過ぎたのだろうか。


行き場の無い手を閉じたり、開いたりしてみる。

頭の中には、あの温もりがしっかりと残っている。
だが依然として手の中には冷たい空気が流れている。

彼女はまだ12歳で、守備範囲内に居て。
月日を重ねれば、年を取るなんて。

ただの御伽話の様にしか感じなかったのに。

私の知らないところで、彼女は確実に成長している。
――私が彼女を好くのは“幼い”から?

いや、もっと別の感情を抱いていたはずだ。
何か、別の思いを、抱いて、望んで――

その“思い”が一体何だったのか、思い出せずにいた。


「思い出せないなら、その程度だった、ってことよ」


エリスちゃんが突然現れて、茶々を入れる。


「違うんだ、きっと“思い出せない”んじゃない。
 “思い出せなくしている”んだ」


――思い出せば、苦しくなるだけだぞ。
心の奥底の私が語りかけてくる。

ぶんぶんと頭を振ってその声を振り払う。


「…………もう、彼女を子ども扱いしないようにしよう」


甘やかして突き放されるのなら、
甘やかさず受け入れてくれる方が幾分かマシだ。

少し、自分が我慢をすれば好いのだから。


「じゃあ、厳しめの仕事を渡す?」
「そうだね、そうしようか」


渡そうと思っていた仕事絡みの書類を持ち、
別の仕事が書かれた紙を取りに部屋に戻る。

その道中、思わずため息を吐く。


「Aちゃんは、もう少し落ち着きがあると好いよねえ」


現に今も、書類を渡せなかったわけだし。


「そこが好きなんでしょ」
「目ざといねえ」


カルガモのヒナのようについて来るエリスちゃんに図星を突かれた。


 


(誰よりアナタを見て来たもの。当然よ)

第一部、完!→←第四十四話 白のカーネーション



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 森鴎外   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 1でお願いします! 更新頑張ってください!!続き楽しみにしてます!! (2018年4月8日 21時) (レス) id: 7443137317 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - みぃさん» 原作第五十話に続くような形で書かせて頂きました。二三回読める話をモットーとしておりますので、深く考えていただけたら嬉しい限りです。更新頑張ります! (2018年4月7日 11時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 最後ので涙がブワッと…エリスちゃぁぁああん!! 更新楽しみにしています! (2018年4月5日 16時) (レス) id: d62fbb3902 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - **楼椛**さん» いえいえ!応援有難う御座います。たっぷりお楽しみください! (2018年3月26日 20時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
**楼椛** - 初コメ失礼します!今日初めて拝見させていただいたのですが、とても面白いです(ありきたりな言葉ですみません) 更新頑張ってください!これからも森さんを楽しみにしてます!←← (2018年3月26日 19時) (レス) id: e7e0abd8b6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:臣民 | 作成日時:2017年10月22日 9時

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