難攻不落のシンデレラ

06 石川side ページ7

『っ！！』

清水さんがスパイクを決めてAさんの肩を叩いて声を掛けた時、向こうのコートに異様な空気が流れた。その手を振り払った、ちらっと見えた木田さんの表情は今にも泣きそうなくらい怯えたものだった。
成程…こうなるのか。
喋れないどころかこれ、もっとヤバいやつじゃない？

石川「やば」

ゲームは一時中断。隣のコートは続いているけど、ゲームを見ていたメンバーの視線は一気に彼女に注がれた。
チラッと隣のコートでゲームをしている石井さんに目をやるも、石井さんは向こうに集中している。これは俺が行くしかないやつだ。

石川「はいっ、ポジションついて！次やりましょ！」

これはなかなか厄介だな。これで高卒、イタリアのプロチーム所属か。イタリア…男…よくそんな敵地に赴くような事したな。でもそれもバレーに貪欲だから我慢が出来る、とか？

石川「分からん」

ゲームは無事再開されて、僅差で俺達が勝って別のチームと交代した。あのプレー以降、相手の雰囲気は悪かった。とはいえ、触れさえしなければ至って普通。いや、普段の試合で見る笑顔や元気は無いけど、清水さんや健太郎さんからアドバイスを受ければ素直に聞き入れていた。
女子の監督も思いきった事するなあ。

石川「意味分かりました」

お疲れ様です、と女子選手2人で水分補給をしているところに男一人で乗り込んだ。よくそこに行けたな、と冷静な自分が思った。


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