37 ページ39
『マサさん!』
あの後、必死にマサさんを追い掛けると自室の扉に手を掛けたところだった。
「…どうしたの」
『っはぁ、はぁ…ちょ…はぁ、はぁ』
「…大丈夫?」
体力無さすぎだよ私。皆のサポートに回っていたりするからそれなりの力はついたけど、流石に体力まではついていなかった。息が少し整ってきたところで漸く言葉もちゃんと発せるようになり、真っ直ぐマサさんを見た。
『マサさん、何処か痛めてるよね?』
「…は?」
『だって、自主練の時もさっきも元気無かったもん!』
「…は??」
『だ、だから…その、腰とか痛めて、痛いのかな…って』
予想以上の迫力のハテナをいただき、思わずどもる私。
『大会近いのに、怪我をそのままにしておくと後で後悔するのはマサさんだよ!』
それでも頑張って言い切った。
選手の為だと思って…
「…はああぁ」
『…え…え?』
選手の為だと思って言ったのに、何故か重たく長いため息をつかれた。
「何でそうなるんだよ…」
『え、違った?』
「いやまあ…違ってはいない…否、違うね」
『ええ…!』
じゃあ何なの!?
何でマサさん、今日はご機嫌ナナメなんですか!?
さっきの石川くんの事もあって落ち着いたとはいえ頭はパンクしている。え、怪我は認めるけど認めない?怪我してるのしてないの!?
頭が混乱していたその時。ぽん、と大きくて温かい、優しい手が私の頭の上に乗せられた。
『!』
「…頑張るから」
がんばる
その言葉に込められた思いは、やっぱり分からない。
でもその時のひと息ついたマサさんの表情は、どこか穏やかで、でも悔しそうで。バレーの時とはまた違う、真剣な表情に少しだけ鼓動が速くなった。
103人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しおん | 作成日時:2019年10月26日 6時