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「あ、寺島さんだ。お疲れ様」
『小野寺くん、お疲れ様。ご飯食べたんだね』
「今日は和風ハンバーグだったよ。早く食べて来なよ」
『うん!』
私と小野寺くんとの身長差、約40cm。見上げる顔はとても満足そうにしていた。すると小野寺くんは私の手に持っているものに目を付けた。
「誰にあげるの?マサさん?」
『ち、違うよ!何でマサさんなの?』
「だって仲良いじゃん」
『これは石川くんに。ほら、イタリア行くから。自炊の為の参考書です』
「イタリアン?」
『ふふ、真面目な料理本だよ』
「はは、なにその真面目って」
おやすみ、と笑いあって小野寺くんと別れた私は、和風ハンバーグを楽しみにしながらダイニングに向かった。ダイニングには丁度、いただきますをする前の石川くんとマサさんが居た。
私が7月頭に買ったそれを渡したのは食後の事だ。
「…マジで…俺の為に!?」
『うん、マジで。俺の為に』
遅くなったけど、あの時買った料理本を渡した。1ヶ月の合宿中にオフもあるから、そこで試しに作ってもらう為とその後の一人暮らしの為。
「超嬉しい、ありがとう!」
『いえいえ』
別に試しに作って私が食べるわけじゃないけどね。家族で楽しく作ってくれたらいいかな。
「うわ、ちゃんとカロリーも栄養価も書いてある!」
『管理栄養士監修だしね』
「すげぇ…!」
「……先戻るわ」
石川くんの顔が晴れるとマサさんの顔は暗くなっていて、また前髪をくしゃりと歪ませた。さっきまで楽しく3人でご飯を食べていたのに…何がマサさんの気を悪くさせたんだろう。
『…』
もしかして…
『ま…』
「待って」
マサさん、と後を追おうとした時、私の腕を石川くんが掴んでいた。
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作者名:しおん | 作成日時:2019年10月26日 6時