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「はあ、あいつマジで勘良すぎ」
大学の課題を思い出した石川くんは急いで部屋に戻っていった。私達はゆっくり部屋に戻る。
『…まあ、初日にいつもの感じで喋ったからね。仕方ないよ』
「付き合ってたの、知ってるのって俺だけ?」
『んー、多分。昴くん、そういうところはしっかりしてたから』
「…本当、Aちゃん思いだね」
…マサさん?
『…ドイツの準備はどう?』
少しだけ残念そうな、少し落ち込んだ声になっていた。だから話題を変えようと試みた。
「まあ、これからかな」
私が心配しているのは気持ちの方と生活の方。バレーは明日からも合宿が始まるし、怪我さえ注意してくれればというだけなのでそこまで心配はしていない。
単身でドイツ…知らない所に行くなんて、ただでさえ日本国内だけでも心細い私には到底考えられない事だ。でもマサさんや石川くんは、大好きなバレーの為だから出来る。
『…私の心配する事じゃないか』
「いや、嬉しいよ。ありがとう」
『どういたしまして。じゃあ、私上だから』
エレベーターの上ボタンを押して来るのを待つ。ちゃんと来るまで待ってくれるあたり、マサさんはやっぱり優しいお兄ちゃんだ。
『ドイツってどんな食材があるのかな…ねえ、帰ってきたら…』
「あのさ!」
『?』
「俺と、ドイツに来て」
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作者名:しおん | 作成日時:2019年10月26日 6時