Love T-Rain【Kaz・N 0617BD/2014】 (ページ13)

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13両目ページ13

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一瞬その男の人は怯んだようにも見えたけど

ニヤって気持ち悪く笑って私の腕を捕まえた

ざーって鳥肌が立つ

「やめてください、離して！」

怖くて小さな声しか出ないけど必死で腕を振り払う

周りの人がざわっとしてるけど誰も声を掛けてくれない。

その人が腕を持つ力を強くする

ヤダって思った時

「その手離せや！！」

聞きなれた、でも聞いたこと無い強い口調の声が耳に入ってきた

「おっさん、次の駅で降りるぞ！」

私の前にある背中

見慣れた、ずっと見たかった猫背な背中

二宮さんは右手でその男の人の腕を強く握って

左手はカバンをもったまま私をかばうように立っていた

「Aちゃん、ちょっと一緒に降りよう」

うんって頷くことしかできなかった。

そうこうする間にも男の人は暴れて二宮さんの腕を振りほどこうとしていたけど

この細い、小柄な体のどこにこんな力があるんだろう

ぐいっと二宮さんは男の人を電車から引きずり出して

ちょうどそこにいた駅員さんに

「こいつ痴漢です」

なにか叫んでいる男の人を突き出した。

駅員さんははっとしてその男の人を丁寧にでも有無を言わさない様子で

事務所の方へ引っ張っていった。

「Aちゃん、大丈夫？」

二宮さんが心配そうな顔で私を見ていたけど

私の心はその怖い出来事よりも二宮さんがここに居ることにびっくりしていた。

「…二宮さん、なんで？」

「あー……実はホームで見かけてたんだけど

俺と会いたくないかなって思って隣の車両に乗ってた」

そう言いながら掌で顎をこする

「ほんとはずっと見てたからもっと早く声かけようかなとも思ったんだけど

Aちゃん自分で嫌だって言えてたから」

私が自分で対峙するの見てくれてたんだ

「でも、どうにも我慢できなくってさ」

なんか俺の方がストーカーみたいだなって笑ってる二宮さん。

「気をつけなよ」

優しく笑ってまた頭をぽんぽんしてくれる

その掌の感触で涙が溢れそうになる

言わなきゃ、今度こそ泣かないで言わなきゃ

せっかく会えたんだもん

「二宮さん、私、二宮さんが好きです」

「彼女さんがいるの見たのにこんなこと言ってごめんなさい。」

「でも、お守りありがとうございました」

そう言ってお辞儀をした。

ありがとうって、

こんな気持ちを持ててありがとうって

そう思えたから。

精一杯の気持ちで頭を下げた。

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