13話 �� ページ17
若武の片手に『木工・竹細工』とタイトルの付いた本を抱えられているのを見て合点がいった。あの本を探していて遅れたのだろう。
受付を済ませてソファに腰を下ろした若武は、正面に座っているのに僕が居ることに気付いていないらしく、表情が酷く強張っている。患者はもう片手で数えられるほどしか居ないのに、だ。それ程、今の若武は極度の緊張状態なのだろう。
ここまでガッチガチに緊張した人間を見ることはそうそうないので、うずうずとした好奇心が抑えられずに、若武の目の前で手を振ってみる。
「……」
…反応ナシ。視線を合わせてみようと顔を覗き込んでみると、焦点が定まっていなかった。流石に可哀そうになったので、これ以上は止めておく。
若武の隣に座って、そっと肩に手を置いた。
「おーい若武、大丈夫かー？」
声帯が震えるギリギリの声で囁くようにして声を掛けると、若武は背後にキュウリを置かれた猫のごとく飛び上がらんばかりに驚いて、ぎこちない動きで僕を見た。口はハクハクと開閉していて、音にならない空気が吐き出されている。
「…た、ちばな」
殆ど唇の動きだけでそう言って、若武は目を見開いて僕を見た。
「若武だけじゃ心配やったから、看護師に話を聞くついでに若武の勇士を見届けよー思て」
いつもの若武なら、すぐに嚙み付いて「俺一人でもやれるっ！」とか「ついでって何だよ」とか言い返してくる。しかし、今はそんな気力すらないらしい。弱った声で、縋るようにして言った。
「じゃあそのついでに、俺の代わりに診察台に乗ってくれよ…」
「いや無理。気持ちは解るけど、それはガチで無理」
バッサリと、懇願を間髪入れずに拒否すると、だよなあ、と若武は深く息を吐いて前髪を掻き上げる。
「あー、ちきしょう…」
悔しそうな表情はすぐに消え、若武お得意の演技でもなんでもなく素で落ち込み始めたのを見て、僕は慌てて話題を変えた。
「えーっと、なんや、やけに遅いなー思っとったけど、それ探しとったん？」
若武の腕に抱えられた本を指差す。
「…ああ、そうだ」
若武は本を膝の上に乗せてタイトルを指でこすると、ゆっくりと言った。
「犯人は、この手の趣味か仕事に関わってる人間だろ。だから、同種類の本を持ってれば、反応を見せるかと思ったんだ」
…だからって、こういう使い方は無いと思う。
「おい立花、驚いたぞ」
「ねえ、馬鹿なの？」
知らない子供から突然、眼前に本を突き付けられたら、そりゃあ驚くだろうよ。
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千佳紗 - 続きを楽しみにしています。早く読みたいです。でも、無理はしないでくださいね。 (2023年1月31日 18時) (
レス) @page18 id: ae5241d4ef (このIDを非表示/違反報告)
みずいろ。(プロフ) - 雪さん» チーッス！雪さん、コメント有難うございます！！ウッ、親からよく言われる言葉に耳が痛い……。了解しましたっ！ (2021年10月15日 4時) (レス) id: 12c43826a1 (このIDを非表示/違反報告)
雪 - チーッス！更新頑張ってください！無理はなさらないでください。 (2021年10月13日 22時) (レス) @page3 id: fe05c62798 (このIDを非表示/違反報告)
みずいろ。(プロフ) - 柚菜さん» 柚菜さん、コメント有難うございます！！はい！頑張ります！！！ヾ(●｀・ω・´●)ﾉ‹ﾑﾝｯ (2021年10月11日 21時) (レス) id: 12c43826a1 (このIDを非表示/違反報告)
柚菜 - 更新頑張って下さい応援してます！ (2021年10月11日 20時) (レス) @page2 id: 1216b927b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みずいろ。 | 作成日時：2021年10月10日 7時
