少年少女の水色事件簿二冊目 (ページ9)

今日:2 hit、昨日:13 hit、合計:24,767 hit

14話　④ ページ9

日曜日。シマ兄と14時に家を出て駅に着くと、すでに黒木は構内に来ていた。そしてやはり、黒木の隣に置いてあるボストンバッグの脇に、若武と小塚、上杉が立っていて、僕は小さく苦笑する。
三人はシマ兄を見るなり姿勢を正して、ほとんど直立不動の姿勢を取った。

「すげっ、本物だ」

思わず、といったふうに零した小塚の頭を、若武が小突くようにして下げさせながら、自分も額が床に付くほど勢い良く頭を下げる。

「立花さん、こんにちはっ！」

それを見て、シマ兄はニカリと笑ったけれど、シャオロン達が見れば間違いなく爆笑するだろう程に照れていた。若武達を自分の目で見て、純粋に慕われているのを感じて気恥ずかしく思ったらしい。
ポーカーフェイスが上手くて、若武達は気付いていないようだけど。

「おう！それで、黒木ってのは何奴け？」

そう言うと、シマ兄の一挙一動を見逃すまいとしていた若武が黒木に手の平を向けて示す。

「コイツです」

若武の目は今まで見たことがないくらいにキラキラとしていて、呼ばれた黒木は呆れたように笑いながら一歩前に出た。

「僕です」

シマ兄は黒木をじっと見て、一つ頷いた。何となく思ってることが解る。『大先生とオスマンを足して割ったような奴』だ。少し雰囲気が柔らかくなった。

「俺に頼みたいことって、何や？」

すると黒木はシマ兄の耳に口を寄せ、何かを囁く。
シマ兄は驚愕したように目を見開き、それから黒木の言葉に聞き入っていた。シマ兄の瞳が輝いているのを見るに、黒木の策は"ワルいこと"なのだろう。去年、嫌いな教師を落とし穴に嵌めた時と同じような顔をしている。
聞き終わると、シマ兄は面白そうに口角を上げた。

「お前、大胆なやっちゃな」

黒木も、シマ兄の真似をして口角を上げて、ニヤッと笑った。

「背に腹は代えられませんから」

シマ兄は黒木の肩に腕を回した。黒木のことをいたく気に入ったらしい。楽しそうに呵々と笑って言った。

「エエやんエエやん、尖っとるやん！うし、ノった！結果も報告せえよ」

僕らは何が何だか分からないままに、二人は意気投合。黒木はボストンバッグを持ち上げると、シマ兄と一緒に駅のトイレに入って行った。

「なんだ、あれ」

唖然と呟いた若武の言葉に、残された僕らは頷くしかなかった。
それから、およそ十分。
現れた二人は、ヘルメットにツナギの作業服を着て、肩から黒い工具箱を下げていた。二人とも背が高いから、ヘルメットで顔が隠れると大人に見える。