少年少女の水色事件簿二冊目 (ページ8)

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14話　③ ページ8

そう言うと若武は言葉に詰まって、僕と上杉を睨んだ。

「じゃあどうしろってんだよ。ここまでわかっていながら、やめるのか」

そうして僕達は、一斉に黙り込んでしまった。ここから先に進む方法が見つからない。
小塚が困ったように僕を見たけれど、何も思いつかなくて首を振って返した。
若武は両手をポッケに突っ込んだままガタリと音を立てて椅子に腰を落として、苛立たし気に足をゆする。

「ちきしょう」

若武の声が静まった教室に響く中、ふと黒木が顔を上げた。

「俺に考えがある。これからちょっと動いてみるから」

黒木の言葉に、若武はパッと顔を輝かせて黒木を見上げた。

「犯人に接近できるのか？」

喜色ばんだ様子の若武に、黒木はふっと笑って答える。

「まあね」

そして、視線を若武から外すと僕に向けた。

「アーヤ、君に頼みがある」

突然そう言われて、僕はぱちぱちと瞬いた。首を傾げて続きを促す。

「明日、そうだな、3時頃、駅に君のお兄さんを連れて来てほしいんだ」
「いいけど、それだけでいいの？」

明日は何も用事は入ってなかったはずだから、僕が頼めば、シマ兄は一発で了承する。そんな簡単なことでいいのだろうか。
そう思っていると、黒木は安心させるように柔らかく笑った。

「ああ、それで十分だよ」

ほっと息を吐く。黒木がそう言うなら、そうなのだろう。僕はゆっくりと頷いた。

「わかった。任せて」

＊

「＿＿それで、シマ兄について来てほしいんやけど」

家に帰ってその話をすると、シマ兄は思った通りすぐに頷いた。

「ええよ。アーヤの友達にも近いうちに会っときたかったし。明日おるんは黒木ってやつだけか？」

僕は苦笑して首を横に振った。

「予定ではそうなんやけどね。他の三人、ああ、黒木もね、シマ兄を尊敬してるから、皆で来ると思う」

そう言うと、シマ兄は目を瞬かせて不思議そうに首を傾げた。

「尊敬？」
「うん、尊敬。憧れてるとも言うとったな」
「俺を？」
「シマ兄を」

訳が分からないといった様子のシマ兄に、小さく吹き出す。
シマ兄は興味が無いことにはとことん興味無いから、自分が尊敬とかされてるなんて思ってもみなかったんやろ。後輩であるショッピやチーノがあんなんだから、余計に。

「シマ兄は、超カッコいいから。気付いてないだけで、他にも色んなヤツから慕われとるで。あ、けど一番は僕やからな！」
「ほうか...」

そう付け加えると、シマ兄は気恥ずかしそうに笑って、僕を抱きしめた。