少年少女の水色事件簿二冊目 (ページ47)

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10話　① ページ47

出てきた男に案内され、僕達は家の脇の狭い道を通った。足を動かしながら、さりげなく家を見やると、空いていた窓から洗濯場が見えた。見た限り、洗濯物が多い割には、幼児のものは見られなかったが…後で調べさせてもらおう。
裏庭に入ると、男は僕達を振り返った。

「僕も一緒に捜そう」

そう言われた瞬間、若武と黒木はアイコンタクトを交わし、黒木が僅かに頷いた。家の中の捜査に掛ける時間を稼ぐための意見が合致したのだろう。
二人が足早に木の根元や庭の隅に向かうのを見て、僕は、申し訳なさと少しの羞恥が混じった表情を作った。

「あの、すみません、おトイレ、貸してもらえませんか？」

仕方ないといった表情で、男がいいよ、と頷いたのを見て、小塚と上杉が同時に手を上げる。

「僕も」

案内をしようと立てた腕を下ろして、男は迷惑そうに眉根を寄せた。

「廊下の突き当りにある」
「ありがとうございますっ」

僕は小さく頭を下げて、一階のベランダから上がらせてもらった。
後ろから付いて来た上杉が、廊下を歩きながら不満げな声を漏らす。

「あいつ、立花と俺達とで、対応が全然違ったぜ。見たか、あの顔。スゲー迷惑だって書いてあった」
「うん、見た。けど、立花も凄かったよね」

困ったように眉を下げながら上杉に同意を示して、小塚は僕に視線を上げた。その目には驚きと感嘆が含まれている。

「立花って、普段はそこまで女の子らしくないからさ。勿論悪い意味じゃないんだけど、普通の女の子みたいな立花、初めて見たから」

全然違和感なかった、ほんと、凄いね。
そう言われて、軽く頬を掻いた。こういう、演技とかは、周りにいろいろ(詐欺師、嘘が上手い奴、いつか宗教創っちゃいそうな枢機卿、etc...)いたからなあ…自然と身についてしまった。

「マ、無断で家宅捜査するんやし、不快感とか違和感とか、与えんに越したことは無いからな」

話している間に、トイレに着いた。

「僕は洗濯物調べるけど、二人はどうする？」
「俺は二階を見る。小塚は？」
「僕は、玄関を見てくるよ」

二人を見送って、トイレのドアを開けて水を流した。それから、足音を忍ばせて洗濯場に向かう。
ドアを開けると、自分の家とは違う洗剤の匂いが広がった。小さい子供が居るからか、そこまで強くない石鹸の匂いがする。
あまりキツく無いと言っても、僕もシマ兄も匂いの強いものは苦手で、家では無香料の洗剤を使っているから、慣れないものは慣れない。軽く鼻を押さえた。