少年少女の水色事件簿二冊目 (ページ4)

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13話　⑧ ページ4

あくる日、僕は学校が終わるとダッシュで家に帰った。部屋の本棚からドイツ語の辞書を取って鞄に入れて家を出て、秀明に向かう途中にあるコンビニで夕飯を買う。
秀明に着いて特別クラスのドアを開けると、もう皆は揃っていて、一斉にこっちを向いた。僕を見て柔らかく笑った小塚に小さく手を振って、空いている席に鞄を下ろす。
顔を上げると、気まずそうな様子の若武と、挙動が少しぎこちない上杉、不思議そうな顔をする黒木が目に入った。もしや、と小塚を見て声を上げる。

「小塚、もしかして言ってない？」

すると小塚はあっと声を上げて、慌てて僕達の間にある認識の齟齬について話し出した。全部話し終わると、三人は呆然として固まっていて、いつも小さく笑みを浮かべていた黒木までそんな顔するのは珍しいな、と僕は呑気に思った。
唖然としていた三人は、暫くすると黒木、上杉、若武の順に動き出した。黒木は愉快そうに目を細めて笑い、上杉は深く椅子に腰掛け、若武はグシャグシャと髪を掻き混ぜて大きく息を吐く。何かを言おうと動かした口は言葉を紡ぐことは無く、またもや息を吐いて机に突っ伏した。
行動が理解できなくて首を傾げると、黒木が笑いながら口を開く。

「若武は、立花が怒ってたらどうしようって思って、いろいろ考えてたんだ。なのに、立花は気にしてなかったから、今、気概を一気にそがれてる状態」
「それは...うん、ごめん。小塚にも昨日言ったんだけど、僕、一度考え込むと周りが見えなくなるんだよ」

ホント、気を付けてるんだけどね。申し訳ない。

「あーっと、成分表、見せて貰える？」

気を取り直してそう言うと、一番近くに座っていた上杉が一冊の本を取り出し、真ん中あたりのページを開いて僕の前に出した。

「ここだ」

それを見て、僕は眉を顰めた。
文字、ちっさ！
鞄から眼鏡を取り出してかけると、上杉が驚いたような声を上げた。

「立花、眼鏡かけるのか」
「ん？うん。遠視だから、遠くを見る分にはいいんだけどね。近くを見るとなると、眼鏡なしじゃ全然見えなくて」

言いながらザッと目を通す。うん、一応辞書持ってきたけど、これだったら使わなそうだな。
鞄からＢ６のノートを取り出して小塚に問いかけた。

「これって緑の塗料だけ？それとも全部書き出した方がいい？」
「うん、一応全部お願い」
「わかった」

ノートを開いて、順に書き出していく。
まずはDie Farben(塗料)から。