少年少女の水色事件簿二冊目 (ページ28)

今日:5 hit、昨日:17 hit、合計:24,757 hit

4話　① ページ28

秀明が終わって家に帰ると、時計はもうすぐ12時を回ることろ。誰も居ない家に、ただいま、と言って靴を脱ぐ。
今日は、シマ兄はいない。
委員会や部活の引継ぎについて、グルさんの家で話し合いをしているのだ。泊まりがけだから、明日の夕方まで帰って来ない。
シマ兄がいないと、この家はとても広く感じる。普段はシャオロン達も遊びに来て賑やかだから、余計に。
こうも静かだと、暗闇から何か出てきそうで...。ああ、駄目だ駄目だ。
ブンブンと首を振って、暗くなった雰囲気を払拭する。うん、お風呂は明日にして、今日は早いこと寝よう。

＊

次の日。
お風呂から上がって髪を拭いていると、電話が鳴った。タオルを肩にかけて受話器を取る。

「はい、もしもし」
「あ、もしもし、立花？」

小塚だった。雑誌から、何か発見したのだろうか。

「悪いんだけどさ、ちょっと出られる？例の事件のことで、急いで見てもらいたいものがあるんだ。僕、三谷大塚に行かなきゃならないから、30分後に駅で待ち合わせたいんだけど」

緊張しているのか、強張った声を出す小塚に、ゆっくりと頷く。

「わかった」

受話器を置いて、少し考える。駅までは、自転車で行けば、おおよそ15分から20分で着く。
着替える時間が惜しかったため、シャツの胸ポケットに眼鏡を入れて、部屋着の上にカーディガンを羽織って家を出た。
自転車を止めて構内に入ると、改札のところで小塚を見つけた。おーい、と手を振ると小塚も気付き、此方に駆け寄って来て僕の腕を掴んで、人通りの少ない切符売り場の端に連れていく。

「これを見て。ほら、ここ」

そう言って小塚は、昨日の雑誌を見やすいように広げた。眼鏡を掛けて指差された部分を見詰めると、ぼやけた点のような、インクが滲んだような、小さな印が付いている。開かれたページ数は53ページ。

「こっちも」

少し捲った所を開き、指差す。ページは75ページ。

「それから、ここにも」

また捲って、同じように指差す。今度は101ページだった。
じいっと見詰めて、口を開く。

「これ、インクの染み？」

小塚が頷く。

「うん。紙の表面を少し削って、成分を分析したんだ」
「じゃ、やっぱり犯人は、前の切り取られたページに何か書いたんやね」

言うと、小塚が厳しい表情で言う。

「一体、何を書いたんだろ」

それを見て、僕は口を開いた。

「でも、僕を呼んだっちゅうことは、何か見つかったんやろ」

頷いて、小塚は何枚かの紙を取り出した。