13話 �� ページ2
あれからニ十分ほど。
勢い付いた小塚の言葉に相槌を打って、共感したところには強く同意、意見していくと、落ち着いたのか、小塚は申し訳なさそうに言った。
「ごめん、僕ばっかり」
「いいって。いろんな話が聞けて楽しかったし」
それよりも、と小塚に疑問を投げかける。
「僕に用事があるんでしょ？何かあったの？」
小塚は、あの、と言い難そうに声を曇らせた。
「えっとね、頼みがあるんだ。悪いんだけど」
何故かは分からないけど、小塚は僕に遠慮しているようで、言葉を選んでたどたどしく続ける。
「僕、君の力を借りたいんだ。どうしても、君の力が必要なんだよ」
どうしてこんなに遠慮がちなのだろう、と不思議に思いながら、緩く首を縦に振る。
「いいよ、何をすればいいの？」
そう言うと、電話越しの雰囲気が柔らかくなって、小塚が安心したように小さく息を吐いたのが聞こえた。
「えっと、黒木が塗料の成分表を手に入れてきたんだけど、僕、読めないんだ。塗料の種類が全部アルファベットで表示されてて」
てことは外国語か。英語、若しくはドイツ語、ギリギリロシア語は解るから、そのあたりだったらいいんだけど。
「黒木が言うには、ドイツ語だって」
ビンゴ！
「それで君に呼んでほしいんだ。だって君は、語学のエキスパートだろ」
おお、改めて言われるとムズ痒いな。嬉し恥ずかし、って感じ。
「よし、わかった。明日、秀明の授業前に特別クラスに行けばいい？」
グルさんのおかげでドイツ語は得意分野だ。と言っても、すごく興奮したりするとのべつ幕なしにスラングで喋り出すから、慣れざるを得なかったというか。
「うん、ありがとう。みんな、君に期待してるよ」
心底安堵したように言われた言葉に、驚いて瞬きを繰り返す。さっきから思ってたけど、なんか態度が可笑しいというか、僕と小塚の認識に齟齬がある気がしてならない。
どうしたの、と僕が口を開くより先に、小塚の声が受話器から響いた。
「今日、黒木が持ってきた成分表を見て、僕はお手上げ。みんなも頭を捻ってたんだ。そしたら若武が、これは立花の分野だから立花に頼めよって言いだしてね」
うん、だから小塚は、こうして電話をかけてきたんでしょ。
「それで黒木が怒ってさ。あんなこと言っちまったら、今さら駄目に決まってるじゃないかって言ったんだ」
...うん？？
「上杉も、立花はもう、俺達と一緒にやらないだろう、俺達は国語のエキスパートを失ったんだって言って」
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作者名：みずいろ。 | 作成日時：2021年6月24日 18時
