32 回想 ページ33
廉と大吾が出ていって数週間。宮殿にも敵が迫ってきていた。三つある門のうち二つをやられ、残りは一つ。宮殿の中に敵が入ってくるのも時間の問題だった。
流「A様!」
外を眺めていた私の前に走ってきた流星はけわしい表情。ついに…か…
「どうしたの?」
流「………廉君と大ちゃんが……」
「そっか………」
二人とも頑張ったね。ゆっくり休んで…
流「A様、敵が迫ってます。このままだと………」
宮殿に残って居るのはおばさまと流星と私と数人の家来。
「流星、急いで宮殿に残っている者たちを連れて逃げて。」
流「A様………」
「急ぎなさい!抜け道を使えばまだ逃げられるはず。」
流「…わかりました」
流星は走って部屋を出ていった。私は廉の部屋に向かった。
「失礼します。」
いつもと同じように部屋に入る。一つ違うのは廉の不機嫌そうな声が返って来ないこと。
「廉…ありがとう…」
一人で呟く。本当はもっと…一緒にいたかったな…
外が騒がしくなってきた。ついに…来た。
焦げ臭い匂いを感じる。火?全部燃やす気なんだ……流星たちは無事に逃げられたかな?
あっという間に黒い煙が辺りを覆いだす。
足が震えだした。覚悟は決めたはずなのに………怖い……
「廉……一人は怖いよ……」
思わず本音がこぼれた。
流「一人じゃないですよ?」
「っ…流星…なんで…」
流「A様のこと、廉君から頼まれてるんで。最後まで一緒ですよ。」
流星は私の隣に来てそう笑った。
「………流星、きて」
流「はい。」
ぎゅっと流星を抱きしめる。
「また、会えるといいね」
流「そうですね、いつかまた………四人で遊びたいです。今度はずっと……」
流星は私に抱きついたままそう言った。流星は微かに震えていた。しっかりしてるからいつも忘れちゃうけど、流星もまだ幼い子どもなんだよね。
「流星、ありがとう。生かしてあげられなくて、ごめんね」
流「いいえ、僕は幸せでした。もう、十分ですよ。」
流星は本当に強い子だった。最後まで弱さを見せないんだな………もっと甘えさせてあげればよかった。
だんだん意識が遠のく、私を抱きしめる流星の力が弱くなる、そして一瞬だけ息苦しくなって…………意識か途切れた。
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作者名:L | 作成日時:2015年7月25日 23時