柄長 ーSho.Hー ページ30
家に帰らなくなってから、俺はただ生きていた。…いや、和奏がいなくなってから俺の時間は止まったままやからもう死んでるも同じや。
俺の時間が動かないのは多分、心のどこかでそれを望んでいるから。
紫「…和奏…」
河川敷の橋の下で空を見上げる。空は泣いていた。まだ梅雨入り前なのに梅雨本番のような雨。…まるで四年前の様な…
紫「進めへん。…進みたく、ない…」
胸の赤薔薇に触れる。赤薔薇からは和奏のぬくもりが伝わってくるようやった。
その時橋の影から気配がした。知ってる…これは…
紫「…なんの用や？礼央。」
青「その呼び方やめてよ。瑞稀。」
現れたのは《天照》のメンバー、コードネーム『青龍』こと『東礼央』。ちなみに本名は知らない。
ただの高校の後輩。
紫「お前こそ、瑞稀って…」
青「いい名前じゃん、倉田瑞稀って。いっそ本名にしちゃえば？」
紫「その名前はもう使ってない。…旭は？」
青「…いつも一緒ってわけじゃないよ。」
俺が聞いたのは礼央の相棒、コードネーム『麒麟』こと『北川旭』のこと。
紫「何があった？」
青「今は…でも、これから」
紫「…ディアプトラか？」
青「俺はウィンクルムの味方。でも、麒麟の身に…いや、メンバーの身に何かあったら俺は迷わず敵になる。」
礼央の目はギラギラと光っていた。
青「四年前や…ロセウスの時のようにならないように…」
紫「ロセウスは自分の意思で出ていっただけや！ディアプトラは関係ない！」
首にかかるもう一つのペンダントを握りしめる。赤薔薇の下に輝く青薔薇。三人が一緒にいた証明。
青「…あれから連絡あった？」
ロセウスが何の前触れもなくいなくなってから二年。それから一度も連絡はない。
青「…ディアプトラに始末されたに決まってる。じゃあ、ちゃんと家に帰れよ。」
礼央はそのまま行ってしまった。
紫「…ロセウスは…生きている…」
きっと、きっとどこかで生きている。
胸の青薔薇はいっそう輝いて見えた。
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作者名：L | 作成日時：2017年5月1日 20時
