Recollection2 ページ2
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突然、遠くのほうで太い声がした。
それに反応するように彼女は肩を震わせる。さっきまで断続的にこぼれ落ちていっていた涙が一瞬で止まった。しきりに辺りを見回す。近くに誰かがいるわけではない。しかし声が聞こえる。彼女を震え上がらせるにはそれだけで十分だった。
強く口を引き結ぶと、地面を思い切り蹴る。もう一度、もう一度。もう一度……。
……上手く息が吸えない。何も考えられない。怖い。誰か。誰か……助けて!
「ひぁっ……!」
暗かったのと周りも見ずに無我夢中で走っていたのが原因だろう。またも彼女は木の根に足を引っかけた。顔面から思い切り地面に突っ込んでしまう。
「あ……っ、あぅ……!」
すぐに起き上がろうとしたが、深刻な疲労で手足はピクリともせず、情けない声ばかりが出てくる。ほんの少し動く指先は湿った土を撫でるだけ。思い通りにいかない体に苛立ち、悔しさ故に内心歯噛みした。
逃げたいのに。助けてほしいのに……!
視界がぼやける。引っ込んだはずの涙が滝のように頬を流れていく。彼女は嗚咽を漏らし、ときおり体を痙攣させた。
「……〜っ! 〜……っ!!」
再度、遠くのほうから太い声が聞こえてきた。彼女は「ひっ……」と息を詰まらせる。しかし込み上げてくる涙と恐怖は止まらず、一瞬呼吸が乱れたことで彼女は激しく咳き込んだ。唾液が口内から飛び出し、彼女の口の端と地面を銀色の糸で繋いだ。
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ユメコ(プロフ) - 抹茶餡子さん» すごい時間かかってでも完結させたい意向 (10月27日 8時) (レス) id: a15a19cfdf (このIDを非表示/違反報告)
抹茶餡子(プロフ) - 生きてた!!!!!!??????久しぶり!!!!ありがとう!!!!!!(餡子) (10月27日 6時) (レス) @page4 id: fcff9db541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユメコ | 作成日時:2021年4月25日 6時