Recollection1 ページ1
森の中を少女が歩いていた。影のように底なしの黒をゲソにまとい、ボロい布切れで細い肢体を覆っている。足取りは頼りなく、体のいたるところが土を被っていた。長い枝を杖代わりにし、息も絶え絶えに宛てもなく進み続ける。
そんな格好になってまで成し遂げたいことでもあるのだろうか。それは彼女にしか分からない。だが、充血した目と口の端からこぼれ落ちるよだれが事の深刻さを物語っていた。死を迫るものか、奪うものか。それとも他の何かか……。
やがて狭い道に入り、森の暗さが増した。足元が見えづらくなったためか、意地悪くうねった樹木の根に足を引っかけてしまい、受け身を取ることも叶わず不格好に転んでしまう。彼女の喉から心底苦しそうな声が漏れた。しかし、すぐに枝を地面に突き立て、おもむろに立ち上がる。彼女は痛む両膝を睨み付けると、また黙々と歩き出すのだった。
……どれくらいの時間と距離を歩いたのだろうか。
頭上の遥か彼方にあったはずの日はすでに暮れ、黒く染まった森を彼女はひたすら歩いて行く。目的地の無いまま。
疲弊した体を回復させるために必要な水や食料は自らの手で生み出し、食べる。数えきれないほどの傷は治癒能力を使って癒した。彼女にできることはそれだけ。そのどれもは彼女の持つ魔法の力によって行われたことだ。実はその力を有効に使えば森を抜けることは容易なのだが、まだ幼い彼女はそんなことを知る由ももなく最低限の処置しか施せない。だから、回復させたはずの体もまたすぐにボロボロになってしまうのだった。
魔女が魔法を使うには体力が必要になる。己の体力がその魔女の魔力量を示している。つまり魔法を永久に使うためには休みをとって体力を回復させなければならない。
だが彼女はどうだろう。少ない休みと過度な運動。そして小さな体。心身にとてつもない疲労がのし掛かっているのは言うまでもない。
ぽたり。かさ……っ、がさ……ぽたり。
落ち葉を蹴る音に、涙が落ち葉に染みる音が混ざる。珠のような涙が彼女の頬を伝って、次々と落ち葉に吸い込まれていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユメコ(プロフ) - 抹茶餡子さん» すごい時間かかってでも完結させたい意向 (10月27日 8時) (
レス) id: a15a19cfdf (このIDを非表示/違反報告)
抹茶餡子(プロフ) - 生きてた！！！！！！？？？？？？久しぶり！！！！ありがとう！！！！！！(餡子) (10月27日 6時) (レス) @page4 id: fcff9db541 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユメコ | 作成日時：2021年4月25日 6時
