口から伝わる【チェンソーマン】 (ページ10)

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「あらら！百目鬼君とも有ろう者がどうしたの」
「(ゆだんした)」
「油断したらしいッスよ」
「えー何それー。ちょっと強くてイケメンだからって調子乗ってるんじゃないの」
「いやイケメン関係ないし」
「でも良かったよー。間に合って。百目鬼くんが死んだらアキ君がまた泣いちゃうから」
「またってなんですか」
「(ほんぶにほうこくしないと)」
「え？なんて？」
「姫野さん本部に電話しました？」
「えっ、したよ」
「だってさ」
「(ありがとござます)」
「ありがうございますって」

早川がAの通訳になりながら姫川との会話をサポートする。

「さー、帰って飲もう飲もう‼」
「えぇ。飲むんすか」
「今日はよく酔えそうだ！」
「(えー)」

Aは心底嫌そうな顔をする。姫野はそんなAの様子を無視して居酒屋へ予約の電話を始める。

早川は姫野が電話しているのを見て小さい声でAに問うた。

「声、なおすか？」
「(かなりながくかかりそうですよ)」
「俺は構わん」
「(ひめのさんにばれないていどで)」
「はぁ？………姫野さんちょっとトイレ行ってきます」
「(つれしょんでーす)」
「え！良い歳こいて連れションすんなよー。いいよ。車で待ってるわ」

「A…」

ヘラヘラ歩いていると物陰になった所で早川に急に引き寄せられた。
そのままふにっと唇が重なった。
Aは目の前いっぱいに広がるアキの顔をじっと見ていた。
あー。今脳内の幸せホルモンが食われてるのか。
この場には似つかわしくない事を考えていると、早川がつんつんと唇を舌先で突いてくる。
へいへい。と理解して口を開くと早川の舌がにゅるり入ってきて、自分の舌に絡められる。
何となく目を開けて、目の前の早川を見ていると、不意に目が開いてバッチリと目が合った。早川がフッと笑ってやわやわとAの下唇を噛んで来る。頬にあった早川の手がゆっくりと下がってきて、Aの腰辺りで留まった。ソッと早川が唇を離して、不満げな顔で問うた。

「あんだよ…」
「(なんもない)」
「チッ、まだかよ」

Aの声が戻っていないことに不満げな発言をするが、少し嬉しそうである。早川の大きな手がAの両目をおおって暗闇に包まれた。
そして、またふにゅっと唇を啄まれた。

あったかー。感情はそれだけだった。
口に出せば早川の機嫌を損ねるだけなので心の中にとどめた。