口から伝わる【チェンソーマン】 (ページ9)

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「ちょっとちょっとアキ君ってば！そんな急がなくても大丈夫じゃない」

早川は姫野の言葉に返事をせず車を飛ばした。
数分前に珍しくAから連絡があった。こちらも仕事で取れなかったが、そのあとすぐマキマさんから援護に向かうように指示が出て、妙な胸騒ぎがして汗が吹き出る。

「(アキ君。百目鬼君の事になるとすぐこれなんだから)」

車の中で姫野はため息をついた。
______________
「はぁっはぁっ」

Aは物陰に隠れながら息を整えた。蛸の悪魔がいると聞いていたが、ゾンビの悪魔まで居たのは誤算だった。数が多くて手がかかる上カオスな状況になっている。
まとめて討伐を目論み半数ほどに減ったはずだが、声を出そうとも声が出ずAはさすがの状況に冷や汗が垂れた。手数を使いすぎたから言霊が使えない。肉弾戦か。
ごくりと生唾を無意識に飲み込み、腰元の銃取り出したが、ギリギリまで温存させようとサバイバルナイフに手をかけた。

〈みぃーつけぇた〉

耳元から不協和音が聞こえて反射的に飛び出せば、自らここにいる事を知らせるのと同じで一気に敵が押し寄せた。Aはナイフで悪魔をかっさばきながらガムシャラに走った。数には勝てないか…。腕に痛みを感じてから、切られた事を理解した。

〈美味しそう…〉
〈こんな、つぉいやつぁ、初めえてだ〉

「………………」

囲まれたAは立ち止まって息を整えるが音はない。血がべっとりついたナイフは切れ味が悪くなってきてAはズボンで拭う。

「コンッ!!!」

ボンッと大きな音がしたと思えば、白狐が現れてバックリと悪魔達を食べた。Aはびっくりして狐を見た。ジロリと狐の目と視線が合った。

〈また逢ったネドウメキ…〉
「(やあ)」
〈もういいかいアキ〉
「あぁ」

アキは狐に返事をしてAの元へ走った。

「大丈夫か？怪我は？」
「(だいじょぶ)」

はくはくと声にも吐息にも鳴らない音がわずかに聞こえアキは察した。ヘナヘナと力が抜けたようにしゃがんだA。

「馬鹿野郎。むやみに力を使いやがって…」

同じようにアキもしゃがんで目線を合わせた。Aは笑って疲れたと音にならない唇を震わせた。

「おつかれさん。」
「(くるとおもってた)」
「あぁ？来ると思ってたじゃねーよ」
「(おこってる？)」
「別に怒ってねーよ。ほら、歩けるか」

Aはアキの手を取って立ち上がった。