口から伝わる【チェンソーマン】 (ページ6)

今日:2 hit、昨日:13 hit、合計:3,756 hit

5 ページ6

「嘘だって」

Aから放たれた気に驚き、そう言うと肌のピリつきは治まった。

「あ、すみません。職業病みたいなもので」
「いいよ。気にしてない」
「良かった…」

何が良かったのかわからないが百目鬼Aは安堵の表情になった。少し気恥ずかしい気持ちになり早川はドライヤーを取りAに投げた。

「ほらドライヤー。あとは自分で乾かせ」
「ありがとうございます」
「明日は7時には出られる様にしておけ。適当に冷蔵庫の物は食べていい。寝るとこは…」
「ここの辺でいいですよ」
「そうか」

それだけ言うと早川はカラカラとベランダに出てタバコに火をつけた。その姿を少しじっと見ていたAも立ち上がって洗面台で髪を乾かした。

＿＿＿＿＿＿＿＿

早川が朝起きるとやつは硬いフローリングに大の字に寝ていた。こんな硬いところでよく寝られるな。と呆れながらいつものルーティンであるコーヒーを煎れて、Aの上を跨ごうとして近づいた。

「‼」

さっきまで死んだようにグーグー寝ていたAの目がバチッと開いて跳ね起きた。その動作の機敏さに早川は驚くきマグカップの中のコーヒーが波うってはねた雫がAの腕に落ちた。

「あっ！」
「ッ‼」

咄嗟に痛みを伴った腕をAが押さえると早川もコップを机に置いてしゃがんだ。

「わりぃ！大丈夫か!」
「へ？だ、だ大丈夫れす」

若干覚醒しきっていないAはヘラリと笑って大丈夫であることを凄い血相で心配してくれる早川に伝えた。

「そうか…わりぃ」
「いやいや！こちらこそすみません。逆に起こしてくださってありがとござます」
「……本当にお前殺し屋か？」

会ってからもう数十回は言われているお決まりのフレーズにAは早川の人間味に興味が湧いていた。

そしてその数時間後にきれいな建物の中を早川についていき、周りの目新しい環境にキョロキョロしているうちにマキマの前にいた。

「キレイになったね」
「ありがとござます」
「はい。これ新しい制服」
「ありがとござます」
「百目鬼君の所属なんだけど退魔特異4課にしようと思うんだ」
「は、はぁ」
「あぁ。わかんないよね。アキ君と一緒ってことね」
「なるほど」
「百目鬼君のバディは亀山さんにしようと思うからまた詳しくはそっちで聞いて」

ゆっくりマキマがAに近づき、肩に手を置いて言った。

「これから一緒に死ぬまで働こうね」

そういったマキマさんは笑った顔をしているのだろうが僕には表情が読めなかった。