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あぁ。コイツはどんだけの死線を抜けてきたのか。Aの表情に早川は釘付けになった。
急に何も言わない早川の様子を変に感じ取ったAは目の前でひらひらと手を振るとハッと我に帰った早川に頭を小突かれて行くぞ。と歩を進めた。
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そんな感じで公安のデビルハンターとして百目鬼Aは働く事となった。
殺し屋家業では真っ黒の服を好んで着る。それは闇に紛れる意味もあるが相手の血を浴びる可能性もあり、色々と黒は隠すのにちょうどよい。
場所は早川の家に変わり、靴を脱ぐなりすぐに風呂場に投げ込まれた。
お湯が身体に染み渡り安堵の声をもらし、湯船に浸かりながら鼻歌を歌う。すると洗面所から早川の声がした。
「おい、お前の服血みどろだから捨てるぞ」
「どうぞどうぞ」
「俺の着なくなった服おいてる」
「ありがとござます〜」
扉の向こうにいる早川という男は、不器用ながらに面倒みの良い優しい男だと思った。公安のデビルハンターなんてしていたら仲間も沢山死んだだろうに耐えられるのかな。
長年この生死を取り扱う世界に身を置いて来た自分としては感情という物が邪魔をする時がある。
殺し屋をやめて普通の生活に憧れた。誰かにありがとうと普通に言われる世界。
「向いてないんじゃないかな〜」
早川の事か、いや自分の事かわからない声が漏れる。
風呂から上がれば体が清められた気がした。
そういえば公安に行くと言っていたのに呑気に長風呂をしてしまった。早川を待たせている事に気付いて置いてある服を急いで着る。
デケェ…。まああんな高身長の筋肉質と服が一緒なわけないか。
「おまたせ…」
「バッカ‼お前！頭をちゃんと拭いてから出てこい！」
ボタボタと毛先から雫をたらして出てきたAの姿を見て早川は目くじらを立てて怒った。
「あ、すみません」
Aはしゃがんで裾の長い服でぬらした床を拭いた。すると早川が口を開いた。
「お前…本当に殺し屋か？」
「また？」
早川はAの横を通り過ぎ、洗面所から新しいタオルを持ってきてしゃがんで床を拭いているAの頭にタオルをかけ、ワシャワシャとかき回した。
「俺の想像していた殺し屋ってのと違いすぎる。敬語使えるし、靴も揃えて脱いでる。それでもって汚したらちゃんと自分で拭いてるし。もっと傲慢で目が合えば殺す…とかそういう人種かと」
「同業者はそういうやつばっかりでしたよ」
「お前は変な奴だな」
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作者名：アバランチ | 作成日時：2023年7月10日 12時
