口から伝わる【チェンソーマン】 (ページ3)

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マキマが口角だけを上げて笑った。
その瞬間この人が苦手、いや嫌いと直感した。

「じゃぁ行こっか」
「へ？行く？」
「ちょっと待ってください！こんな汚い奴を乗せるなんて嫌です！」
「んー。確かにそれもそうだね。じゃあアキ君。明日この子と公安に来て」
「「は？！」」
「あ、そう。君の名前。聞いてなかったね」
「……百目鬼A」
「そう。じゃぁまたあとで」

呆然と立ち尽くす早川と呼ばれた男。
マキマ…さんと早川は2人でブツブツ話していたが諦めた顔で男が近づいてきたのでAはいちおう頭を下げた。

「お願いします」

そうAが返事を返すと男はえっという顔をした。何か変な事でも言ったかと思いAは自分より身長の高い男を見上げた。

「…敬語使えるんだな」
「えっと…まあ日本人なので」
「そういう事じゃないが…お前の家は？」
「家は…こいつに破壊されて…」

そう言って血に塗れた地面のその下には家だった何かが散らばっていた。
アキは頭を抱えてあぁあ！！と叫んだ後Aに向き直っていった。

「今日だけだからな！」
「あは…すっごい顔…すんませんね…」

絶望した顔から腹を決めた顔に変化していく早川という男は面白いと思った。

「あれは…お前1人で？」
「え？あぁ。まぁ」

鰐の悪魔からただの血塊になったアレについて聞かれた。

「お前…何者だ」
「元殺し屋ってやつですね、今はデビルハンター的な」
「ころしや?ハッ、新人。ここで先に教えといてやるよ」

急に物々しい雰囲気をまとった違和感を察知した途端、男の長い足がこめかみ辺りに来た。Aは両手でその動きを防ぎ、後ろへ大きく間合いを取った。
その瞬間、狩りのスイッチが入ったAはニタァっと笑って男を見た。
目があった早川は背筋が凍って本能で動きを止めた。
なんだコイツのこの雰囲気は。さっきまでの様子とまるで違う。Aを蹴り上げようとした足が重い。

「…実力は中々だな」
「あれ？終わりですか」
「うるせー。俺は早川。早川アキだ」
「宜しくお願いします」
「…軽い気持ちで仕事するやつは死ぬぞ。生きてるやつはみんな根っこに信念があるやつだけだ」

苦虫を噛みつぶした様な顔でそんな台詞を吐き捨てる早川。

「死ぬのは怖いですか」

早川は後ろをバッと振り返った。
そう飄々とした顔で立っている殺し屋の男の後ろには無数の怨念の影が見えた。ゾッと鳥肌が立ち、瞬きをすればヘラヘラ笑う百目鬼Aが立っていた。