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「おつかれおつかれー」
そう言ってメガジョッキを持って豪快に天に掲げた姫野が高らかと叫んだ。それにつられて、苦い顔をしている早川とヘラヘラと笑っているAもカチンとグラスを合わせる。
「前から不思議に思ってたんだけどさー、百目鬼くんってなんで急に声でなくなるの？」
姫野はぐいっとこぼれたビールを口元からぬぐって、片方しか見えない目を大きくして聞いた。その質問にAは苦笑いした。
「もう！前にも言いましたよ」
「へ？いつ？いつよ？覚えてな〜い！」
「こないだのんだ時じゃないですか〜」
目の前に店員が注文した料理を持ってきたため、話は途切れた。会も半ばに差し掛かりみんないい具合に酔っていた。目の前では姫野が万歳して寝ている。
「あんま、食ってねえの？」
そう声かけて一服しに出かけて戻ってきた早川がAの横に腰掛けながら聞いた。
「唇がヒリヒリしてるから」
「っ！」
Aは唇を尖らせて小さく文句を溢して鼻をつまんで言う。
「てゆかアキさん煙草臭い」
「うっせーよ」
イラッとした早川がAを小突いた。Aはいてっといってもう何杯目か分からないジョッキを持ち上げて中身を口に運んだ。
「お前ほんっと強いな」
「そんな惚れ惚れした顔で言わないでください」
「んな顔してねーよ」
早川は不満そうな顔で皿に残ったプチトマトを摘んで食べた。Aはその仕草をじっとみつめていた。その視線を感じた早川が、ん？とAを見返した。
「…眠たい」
「そうだな、帰るか」
「タクシー呼ぶ？姫野さんを送らなきゃ」
「あぁ」
早川はそう言いながら手を上げてお会計をする為に席を立った。横になっている姫野は酔っているのか酔っていないのか分からない顔でAに声をかけてきた。
「ねー。どうしたら君みたいになれるの」
「え？僕みたいになりたいんですか？」
「なりたいよー。羨ましい」
「えー。おすすめしないですけどね」
「アキ君を夢中にさせるテクニック教えてよ」
「ないですって、べつにアキさんが夢中になんて」
そう言ってAはいや夢中になってるか。と思って続きを言うのをやめた。
「姫野さーん。帰りますよ」
「んんー。やーだ。帰りたくない」
「あったかーいお布団で寝ましょー」
Aは姫野の腕を自分の首に回して、体ごと持ち上げた。財布にレシートを仕舞いながら早川が歩いてきた。
「やだやだ！！まだ飲むんだい！」
「今日はおしまいです」
「A〜行くぞ」
「ふぁーい」
続く (更新停止中)
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作者名：アバランチ | 作成日時：2023年7月10日 12時
