近藤と土方と万事屋と僕 ページ6
ニコニコとした近藤に見送られながら縁側に出た土方を追いかけるA。
「あ、あのAAと言います。」
「…俺ァ土方十四郎だ。近藤さんに言い切られて仕方なく引き受けたけどアンタにしてもらおうとは思ってねェよ」
あの人は、ったくよぉ…と頭をかきむしる土方を見てAが吹き出した。
「ゴリさ…近藤さんってしょうがない人ですね」
「まあな、ところでそのゴリさんってのはなんだ?」
「ああレンタルネームなんですよ」
「ふーん。……部屋はこっちだ。」
してもらうことはないって話していた土方だが部屋には案内してくれることにちょっとびっくりするA。
「こんなところに突っ立ってちゃァ邪魔でしかない」
土方はAのびっくりした顔を見ていたのか後付のように説明した。
「(あ、照れ隠しだ…)そうですか。すみません、なんか僕が仕事ないなんて言ってしまったからに…」
「あ〜いやーアンタのせいじゃねぇよ。」
ここだ。とぴたっと止まり土方が襖を開けると部屋というよりか紙の山しかなかった。
「何コレ……」
「そこ、書類あるから気をつけてくれ。」
「そこって…ほとんど紙だらけですよ」
土方はドカッと自分の定位置の机の前に座り、Aに自由にしてくれ。とだけ声をかけて書類の山へと取りかかる。
ポツリと残されたAはどうしたものか とぽりぽりと頬をかいて自分に背を向けて頭を抱えている男の姿を見つめた。
どれほど時間が経ったのか喉の乾きを感じてはっと書類から目を離した土方は渋々受け入れた客人…否、レンタル部下の姿を探した。
「いねェ………ん?」
ふと部屋を見渡すと書類でごちゃごちゃしていた自分の周りがスッキリしている。自分以外の足の踏み場がなかった部屋が辛うじて人を招くことが出来る部屋になっている。
「なんだ…これ…」
「副長」
スッと襖が開いてAが入ってきた。
「そろそろ休憩されますか?」
土方専用の湯呑みにお茶をくんでコトリと机の上に置くA。
その所作は慣れたように感じたが、部屋のことを土方は聞いた。
「これはお前が?」
「すみません。何かしていないと落ち着かなかったので書類の内容ごとに分別しました。この方が効率的に仕事がはかどるのではと思いまして。あ、元にも戻せます。」
覚えていますので。と顔色変えずに言いのける男を見ながら適温のお茶をごくりと飲み干した。
「いや…そのままで構わねェ」
少し使ってみても良いかと思わせる、そんな奴だった
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作者名:アバランチ | 作成日時:2022年7月16日 23時