【ag】心のスキマお埋めします (ページ13)

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坂田と僕ページ13

「はぁっはあっはぁっ」

Aは走って逃げていた。チッ面倒くさいな。心で悪態をついて後方に視線を送り、かなり遠くに対象者がいる事を確認したがまだ振り切れていない。
流石にヒールで走るには安定がとりにくい足がもつれる。かつ長い髪が目や口に入る。

「し、つこい！」

前方に視線を戻して、キョロキョロと脇道はないかと探す。
すると、路地裏の隙間からニュッと腕が伸びて来てAの腕を掴んだ。ギョッとしてAは腕の持ち主に攻撃を加えようとしたが、強い力で引き寄せられ、ドンっと相手の胸板に顔をぶつけ、鼻に痛みが走った。そのまま路地裏の真ん中まで引っ張られる。
抵抗しよう暴れるがカツラを取られ、
良いから黙ってろと強い力で後頭部をぐっと押さえつけられる。ドッドッドッドッと相手の心音が聞こえる。
ここでいちごのような匂いが鼻孔をかすめて、この人は知っている人だと理解する。

僕を探している男の声だ。ぎゅっとAは手に力が入る。するとAを抱えている人の手も力が入る。
男が去っていく音が聞こえる。やっと抱きしめられる状態から開放されて状況を救ってくれた人と目があった。

「さ、坂田さん…」
「おーおー。大丈夫か？色男」
「すみません、助かりました」
「何があったんだァ？」
「…………わからなくて」
「すげー汗、ほんとに大丈夫か？」

ずっと30分近く走って逃げて急に止まったからか、汗が吹き出た。
追いかけられている理由。それはホテルに連れ込まれそうになったから。
しかし、心配そうにこちらをみる銀時を巻き込まないためにAはいつもの笑顔を作って大丈夫です。と返事をした。

「………」

坂田さんは無言になり急に手を伸ばして僕の頬を軽くつねった。

「無理に笑う必要ねェよ。俺ァ味方になる」
「さ、坂田さん…」
「まあ言いたくないなら構わねぇけど」
「いつもなら太刀打ちできるんですけど、今日は油断したっていうか常連さんだったのでまさか」
「酷い奴もいるもんだな。何もされてねぇか？」
「その前に逃げてきたんで大丈夫です。坂田さんって優しいですね」
「バッ！」

Aは思ったことを告げた。すると、急に顔を赤くしてそっぽを向く銀時。

「今からお暇ですかご馳走様します」
「へ？いいの？」
「もちろんです」
「やった！なら駅前の特大パフェ食べたかったんだよ～」

Aはぐっと紅をぬぐって銀時の後に続いた。