biohazard of Japan【小説企画】 (ページ7)

今日:17 hit、昨日:21 hit、合計:32,135 hit

六話　荒関丈二ページ7

地から這い出てきた様な低い唸り声が日常的に聞こえてくる現実で、部屋の主である男はその現実から隔離された無音という安らぎに浸っていた。

しかし突然それを妨げるように酷く頭が痛み出し、低く唸りながら重い瞼を開くとすぐに外の現実が視界一杯に広がった。ぽつりぽつりと、人の慣れの果てであるそれがPhoenix本部の周囲を彷徨っている。同時にどこからか、聞き慣れた死霊たちの呻き声が聞こえてくる始末である。

現在の時刻を確認しながら、数時間前の記憶を思い出すために思考を巡らせる。…恐らく、窓際で外を眺めていたら丁度腰掛けやすい窓台に腰を落ち着け、ついには眠ってしまっていたらしい。

中途半端に浅い眠りについたせいか、あるいは死霊のモーニングコールで目が覚めてしまったからか、すこぶる寝覚めが悪い。時刻は既に午後を過ぎている訳だが。

ふと見ると、肩にはブランケットが掛けてあった。
元より仮眠など取る気はなかったのだから寝具など持ち出した覚えはない。
寝てしまっている間に誰か来たのか…、とそう思いながら凭れていた窓から背を離し、少し幅の広い窓台から降りた。

タンクトップというラフな格好は彼の日頃から鍛え上げられた、隆起した肉体がよく映えて見える。その体は微かにじっとりと汗ばんでいて、悪夢ともいえる死霊のモーニングコールが嫌によく効いていた様だ。寝過ごして昼を抜いてしまったとはいえ、この様な酷い目覚め方をしてはとても食欲など沸かない。しかしどこか口寂しいのだ。向こうのテーブルの上にある灰皿と煙草を見ると小さく嘆息をもらしそれを手に取る。

すると部屋の外から誰かの靴音が聞こえてくる。
規則正しいその音から、感染者でない事は容易に分かる。その靴音が丁度、自身の部屋の前に止まったのでじっと扉を見つめる。コンコン、と控えめなノックが聞こえてきて、それに対する返事をする前にその扉は無遠慮に開かれた。

七話貴崎真瀬→←五話　【明石　刹那】