憧れ【Valkyrie】 (ページ33)

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手芸部ページ33

ドリフェスが終われば、僕は早く手芸部部室に向かわなければならない。友ちゃんたちには後日、ドリフェスの感想を言おう。

座席から立ち上がり、早足で手芸部部室へと向かう。

『遅くなりました……！』

｢あ、Aちゃん。こんにちは〜♪｣

影片先輩が手を振って挨拶をする。

『あ、あの……斎宮先輩は？』

｢奥の方にいるで。今、マド姉ェとお話しとるんよ｣

『マド姉……？ですか？』

｢おん｣

マド姉とは誰なのだろう……？
女性だろうと思うが、アイドル科に女性はいないはず……と1人で近くの椅子に座って考えるが全然思いつかないため、考えるのはやめようと思考を放棄し、影片先輩を観察する。

影片先輩はふんふん♪と鼻歌を歌って裁縫をしている。可愛いなぁ……でも、ライブをしている時の姿はかっこいいんだもんなぁ……。とギャップに悶えてしまうのは仕方がない。

｢雨宮？来たのかね？｣

『あっ、はいっ！』

斎宮先輩の声が聞こえたので返事をする。
すると、斎宮先輩は嬉しそうに微笑む。

｢あぁ、待っていたよ。僕の愛しいマリオネット。｣

近くに来て、ぎゅっと抱き締められる。まだValkyrieに所属して2日目だが、スキンシップが多い。推しに抱き締められるなんて考えてなかった……。

｢今日も着てもらえるかい？｣

『……もちろんです！』

斎宮先輩が嬉しそうに服を持ってくる。今日も量が多い。

｢なぁ、Aちゃん。随分とバッグが古いんやね〜。大切にしとるんやなぁ。お下がりとか何かやのん？｣

裁縫をしていた影片先輩が手を止め、僕のバッグを見て聞いてくる。

『えっ……えっと』

持ち物についての話題は触れられたくはなかった。

｢何か歯切れが悪いね？どうしたんだい？｣

『いえ……！何でもないです。親戚から貰ったものなので大切に使っています。』

｢…………ふむ、夢ノ咲の通学バッグは買わなかったのかね？｣

不審に思うのは当たり前だろう。夢ノ咲のバッグではない、古い普通のバッグなのだから。

『僕、お金ないので……』

｢………………そうか。｣

斎宮先輩の眉間にしわが寄っているように見えたのは気のせいだろう。