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玄関の扉を開けると家の奥から聞こえる笑い声に
もっとボーダーにいれば良かったと後悔した
音を立てないように扉を閉め靴を脱いだ
2階へ続く階段をゆっくりと息を殺して上る
自分の部屋に入り扉を閉めてやっと息ができた気がする
大きく息を吐き出せば体の力が抜けたのか
フラフラとその場に座り込んだ
足に力を入れて立ち上がればぐらりと傾く体を支え
持っていたバックを床に落として
そのままベットに倒れるように体を投げ出した
明日のためにまだ寝ることはできない
重くなっていく体と瞼を必死に起こした
朝起きた時体がだるいのはいつものことだった
でも今日はそれに加え頭の痛みもあった
学校を休むか遅刻していくか
頭の中にそんな考えが浮かんだ
その時スマホの通知音が鳴り鬱陶しいと思いながら
スマホを開き表示された名前は犬飼だった
送られてきたメッセージに大きなため息が溢れた
「学校行けそう?」
変なところで負けず嫌いな私の性格を
犬飼は知っていたらしい
犬飼からのメッセージに苛つき
それは学校は行く原動力となった
『ちゃんと行くよ』
そう返したのは学校に着いてからだった
いつもはHR直前に教室に入るのに
今日は20分程度時間が余っている
生徒の数も半分に満たないくらいで静かだった
「あれ?今日はやいね」
私よりはやく学校にいる友達は
「珍しいね」と話しかけてきた
それに『目、覚めちゃって』と笑って返した
「緒音ちゃんだっけ?今日も来るの?」
なんともない世間話しとして振られた話題だった
『うん、多分』
妹の名前をクラスメイトが覚えてしまうほど
大きくなったその存在はクラスに浸透している
その名前が出る度に不安になる
相手から見た自分が笑えているか
「姉妹揃って性格良いよね」
そう言ったクラスメイトの言葉に
『うちの妹良い子でしょ』
そう笑顔で言うのももう慣れたよ
「おい」
いつの間にか教室に来ていた影浦は
相変わらず目つきが悪い
影浦の席を借りて座っていたクラスメイトに
「邪魔だ、退け」と言って手で追い払って
「ごめんごめん」と笑うクラスメイトは
また後でと自分の席に戻った
「雨宮、お前はやすぎんだろ」
『今日はたまたまだよ』
「…そうかよ」
何か言いたそうにしていた影浦は
結局何も言わず席についた
聞きたければまた聞くだろうと思い
私も深くまで聞かなかった
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作者名:lei | 作成日時:2023年9月15日 23時