夜明けが希望でありますように (ページ47)

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犬飼side

好きだとは口に出していない
それでも態度が表情が
水上を好きだと叫んでいる妹を前にして
彼女は何を思っているのだろうか
苦しい？悔しい？
それを顔に出さない雨宮は
妹に譲ったという風に見えてしまう
でも本当は違うでしょ？

多分雨宮は"譲った"っていう表現が嫌で
水上を物みたいにいう俺を嫌いになる
彼女になりたいわけじゃなくて
ただ水上の幸せを願う人だから

「見てるだけで良いの？」

『……え？』

「妹を見習って話しかけるっていう選択肢は
　君の中にないのかなって」

一瞬だけ曇る表情
それが君の本心でしょ？
無理して作ってるその笑みは
周りからバレないようにするための仮面でしかない
やっぱり君と俺は似てるよ
その部分だけ
俺は君みたいに誰か1人の幸せを願えるほど
純情でも純粋でもない

『私は…水上がいいなら、それで…』

その壊れかけの仮面を破壊するのは
きっと水上の役目なんだろう
だったら俺はその仮面に
これでもかってくらい亀裂を入れるね

雨宮か家庭を嫌っていることに気づいたのは
2ヶ月くらい経った頃だった
雨宮の漫画に出てくるようなあの優等生な性格は
妹の前でも継続中だった
単純な疑問だ
なぜ妹にまで猫を被る必要がある

任務が終わりアタッカーの訓練があるという
辻ちゃんを見送り
二宮さんとひゃみちゃんが帰った後
ふらりと立ち寄ったラウンジに
ここ最近よく見る後ろ姿があった
それは1番奥の人気のないところで
黙々と手を動かしていた

「まだ帰らないの？」

集中していたのかピクリと肩を震わせた
雨宮は前に座った俺の声に顔を上げた

『うん、もうちょっとだけ犬飼君は？』

「犬飼でいいよ
　帰るつもりだったけど雨宮がいたから」

『そっか』と顔を緩める姿に
少しだけ警戒心を解いてくれたような気がして
嬉しかった

「その問題集結構難しいよね」

『解いたことあるの？
　学校の授業だけだと大学受験心配で解いてたんだけど
　難しいよね』

「三門で進学しないの？」

『まだ…悩んでて』

その時は「へぇ」と言って流した
他県の大学に行く人は特別珍しいわけではないし
推薦が使えないのなら一般入試で受験するしかないのだ