2人だけの時間 ページ37
ランク戦はさらに勢いを増していた
生駒隊も稼げるポイントが減っていた
B級上位はA級に上がっても
十分な力を持っている実力者が揃っている
そんな人達が闘うのだから1ポイント取るのにも苦戦する
水上も顔には出ていないけど寝不足なのか
眠たそうに目を擦る姿を何度も見かけた
7月の外は暑くて
クーラーの効いた教室に行きたい気持ちもあった
屋上からプールで授業を受ける
クラスメイトの姿が見えた
両耳にイヤホンを付けて右手でスマホを持ち
その画面を意味もなくただ見ていた
水泳の授業に参加できないボーダー隊員は
教室で自習となっている
黙々と勉強に勤しむ人もいるだろうけど
そこまで私は真面目じゃない
休み時間には出入りの多い屋上も
授業中は静かで流れる音楽がよく聞こえる
スマホの画面を真っ暗にして手を下ろして
屋上の柵に体重を預けた
太陽の反射した光が眩しく
アスファルトから発せられる熱があつかった
額や首から流れる汗が鬱陶しくて手で拭った
ガチャリとドアノブを回す音がした
キィと高い音がして屋上のアスファルトの上を歩き
その音はだんだん近くなってきた
「そんなとこで寝ると熱中症で死んでまうで」
薄く目を開け見上げると
そのオレンジはとても眩しかった
『音楽聴いてるから寝ないよ』
制服の擦れる音がして柵に体重をかけた水上は
私の隣にズルズルと座り込んだ
この広い屋上で座るところなら他にあるのに
それでも隣に座るんだと思った
勘違いしそうになる気持ちにやめろと心の中で否定した
ふと水上の右手が私の左手首を掠めた
ただ当たっただけだと気に留めないでいれば
それは確実に私の手首を掴んだ
驚きのあまりビクッと体が震えた
『……いっ、なに?』
水上の視線はじっと下に向けられたままだった
その視線を追いかけそこにあるのは
私の手首に付けられた湿布だった
あの男は意外と強く握っていたみたいで
家に帰った時に赤くなっていることに気づいた
そのままにしていたら朝起きた時赤紫色に変色していて
さすがに見せられるものではないと思い
気休め程度に湿布を貼った
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作者名:lei | 作成日時:2023年9月15日 23時