夜明けが希望でありますように (ページ31)

今日:44 hit、昨日:53 hit、合計:13,855 hit

・ページ31

影浦side

きっと全員が感じていたと思う
雨宮と雨宮の妹がどこからどう見ても似ていないこと
家族の話しをしないこと
妹は使えないのに雨宮だけ使えるブラックトリガー
ボーダーの中で親や家族を失ったという者は少なくない
ただ雨宮のようにあそこまで嫌がるのを見るのは
初めてできっと家族の事情があるのだと思っていた
しかしそれに踏み込むほどの仲ではないし
嫌がられるのは分かっていた
だからそのままにしてきた
こんな結果になることが分かっていたら
そのままになんて誰もしなかったと思う

初めて雨宮と会話をしたのは
3年に進級して初めて席替えをした時だった
同じボーダー隊員ということで
女子が隣になると言われた時は
嫌がられるか怖がられるかの2択だと思った

『隣よろしくね、影浦君』

初めて声をかけられた時久しぶりに驚いた
SEのせいで感情が先に刺さり
その後に声をかけられるのが当たり前になっていた
でも雨宮からはなんの感情も刺さってこなかった
笑っているけど楽しいとか嬉しいとか
そんな感情すらなくて
こいつは周りとは違うんだと思った

ボーダーで初めて見かけた時
雨宮は犬飼と会話をしているところだった
いつもと同じ笑顔を作る雨宮に
違和感を抱かないのは無理な話しだった
そして雨宮の妹だというあいつが
教室に来るようになって確実に雨宮は変わった
声をかけてくる妹に遠慮するような
気を遣っているような態度
自分の妹にそこまでする必要はあるのか
また違和感は大きくなり疑問が積もるばかりだった

「……お前っ！」

感情に任せて掴み掛かった王子に笑みはもう消えていた
あいつがいたところには
無造作に置かれた5000円札が残っているだけだった

「人には人の事情があるんやろ
　首突っ込まんのが賢明な判断やで」

淡白に言い放つ水上に奥歯がギリッと音を立てた
「悪いけど俺も帰るよ」
この状況でも冷静な犬飼は
雨宮の置いて行った金を持って立ち上がった