・水上side ページ20
水上side
イコさん達と合流し誰とでも仲良くなれる緒音ちゃんは
いつの間にかこの空気感に馴染んでいた
そして気付いた時は雨宮の姿がなくなっていた
なにやっとるんやと後ろ頭を乱暴にかいた時
イコさんの声が聞こえそちらに視線を向ければ
迅さんに絡みに行くところだった
苦笑する迅さんになんとなく嫌な予感がした
「あれ、あんな人ボーダーいましたっけ？」
隠岐の視線の先にいるのはもちろん雨宮で
ボーダー内で迅さん程有名ではないのだから
そうなってもしかたない
「S級の雨宮、同じ高校やで」と軽く説明を入れておいた
「お姉ちゃん、あの迅さんと知り合いだったの！？」
その高い声が聞こえてきた時
これは迅さんも苦笑すると納得してしまった
グイグイ近寄る妹と下がって行く姉
耐えるのに必死なんやろうな
そう思う頭は案外クリアなのに
引き攣った笑顔を作る雨宮を見ると焦りに変わっていった
はやく止めんと
緒音ちゃんの肩に手を置こうとした時
それを止めたのは犬飼だった
まるで王子様がお姫様を攫っていくおとぎ話のように
颯爽と現れ雨宮を連れていった
俺の伸ばした手は空気を掴みそのまま落ちていった
「あらら〜」というそんな呑気な声と
「犬飼先輩かっけー！」という後輩がいれば
前にいる2人は甘酸っぱい青春を見ているように
目を輝かせた
どこにいても感受性豊かな隊長は通常運転で
姉の辛さそうな所を全く視界に入れていない妹に
頭を抱えるしかなかった
去っていく2人の後ろ姿を見ながら
雨宮の緒音ちゃんに対して敬遠するような
あの態度を思い出していた
学校でもボーダーでも家でも
雨宮はそんな風に接しているのだろうか
「あんま似てへんな」
「え？…やっぱりそうですよね」
一瞬だけ驚いたように見えたその表情が
眉を下げて小さく笑った
そん顔はよう似とるな
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 53人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：lei | 作成日時：2023年9月15日 23時
