夜明けが希望でありますように (ページ18)

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これ以上ここに居たくない
そう思うのに体は固まり動けずにいた
トリオン体の状態では体調も顔色も悪くなることはなく
周りから見れば
妹と会話をする姉妹に見えているのだろう

助けてほしい

そう思った時だった
肩に加わった重みにやっと酸素が肺に渡った気がした

「もうなにしてるの、ほら行くよ」

『犬飼…？なんで、』

そのまま手首を掴んだ犬飼は歩き出した
それに引きずられるようにフラフラと踏み出した
視線の先は犬飼の背中しか見えないけど
さっきの声色からして
いつもみたく笑っていないことだけ分かった

それを見た緒音と生駒さんは
少女漫画を見る女の子のように目を輝かせた
迅さんはホッとしたように笑いかけてくれた
最後に見た水上は緒音を止めるために
伸ばしかけた手が宙を舞いそのままブラリと落ちていった
こんな状況なのに私はどこまでも醜い性格らしい
緒音に触れることがなくて良かったなんて
そんな風に思ってしまった

ランク戦ブースを出てラウンジまで歩いたところで
やっと犬飼は手を離した
振り返った犬飼の眉間には皺が寄っていて
万人受けする笑顔を作る彼からは考えられない表情だった

「はぁ…。あのさ、今更だと思うんだけど
　もっと表情に出すってできない？」

『どういうこと？』

「助けてほしいとかやめてほしいとか
　感情を顔に出してってこと」

「あれだと誰も気付けないでしょ」と言う犬飼は
大きな仕事が終わった時くらい疲れて見えた
「まぁ気付いたのは俺だけじゃないみたいだけど」
そう呟く犬飼にそういえば水上も
何か言いたそうにしていたことを思い出した
結果的には犬飼に助けられる形になってしまった

『なんで戻って来たの？ランク戦ブース出てたよね』

「隊室に行く途中生駒隊とすれ違ったんだよ
　雨宮ちゃんと水上もいることわかってたから
　その中に加わったら
　大変なことなるだろうなって思っただけだよ」

『ごめん…ありがと』

「俺ミーティングあるから行くけど1人で平気？」

『うん、付き合わせてごめん』

「もうごめんはいいよ」
そう言って踵を返す犬飼は数秒もすれば見えなくなった
最後に見た笑顔には悲しみが混ざっていて
それを作らせたのは自分なのだと思うと
申し訳ない気持ちでまた下に視線を向けた