夜明けが希望でありますように (ページ14)

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会話をしていれば
いつの間にかランク戦ブースはすぐそこだった
以前来たのが何年も前の話しで
何か変わったところがあったとしても気付けない
それくらい私には馴染みのない場所だった
たまにモニターに映し出されるのは実力でいうと
B級下位から中位の人が多いように見えた
緊張は体へと伝わりそのまま攻撃に現れ
まだトリガーに慣れない感じが残っている人もいた

中へ入っていけば
ボーダー内で有名な迅さんが注目されるのは
分かりきっていることだったため特に何も考えずに
ズカズカと私達2人は歩いて行った
迅さんからすれば周りからすごいと言われることも
物珍しいというような視線を向けられることも
慣れているのかもしれない
それは群を抜いた実力が
迅さんにあるということを知っている人が多いからだろう
逆に天羽や私は表だったことはしないし
防衛任務もブラックトリガーがあるため基本1人で行う
天羽に関しては防衛任務を行なっているのかすら
知らないでいる
同じS級隊員であっても関わることはほとんどないし
迅さんのように誰とでも仲良くしようとする人は
案外少数派なのだと思う

迅さんが来たからなのか
はたまた迅さんがよく知らない女を連れているからなのか
私達が来た頃よりも人が増えて騒がしくなった気がする

体感的には30分程度ここに居たと思うけど
強いアタッカーやシューターが闘っているのを
見ることはできずこれといった収穫はなく
ここでジッとモニターを見ることにも飽きてしまった私は
他に面白いことはないかとグルリと辺りを見回した
すぐに目に飛び込んできたのは
スラリとしたオレンジだった
一瞬見間違えたのかと思い視線を外してしまったが
正真正銘あれは水上の後ろ姿だった
意外と水上はランク戦ブースに通う人なのだろうかと
思ったけど今はB級ランク戦を直前に控えている
わざわざ自分の闘い方を敵に
見せるようなことをするだろうか
水上の性格上ただの時間潰しなら隊室にいるだろうし
何かここに目的があるのだと思ったが
それが私には見当もつかなかった
学校に行けばいつだって声をかけることはできるけど
ボーダー内で
しかも隊服を着た水上と会える機会はそうそう無い
お疲れ様でもなんでも良い
声をかけて水上の表情が見たかった

『迅さん、ちょっと待ってて』

「え？…あ、待って！」

迅さんには申し訳ないけど
このタイミングを逃すべきではないと思った
ただ少しだけ迅さんの声が焦ったように聞こえたのが
引っかかった