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霧宮隊
その名前が自分以外の人の口から聞くことになるなんて
思っていなかった
ボーダーの中でその話題は
"今までに無かったもの"
そんな風に扱われているから
他の隊に比べれば表立って目立つようなことは
していなかったはずだ
それなのに烏丸君は知っている
『霧宮隊は…元A級の部隊』
「"元A級"?俺が太刀川隊に所属していた頃
少し噂になってましたよね?」
『もう解散したよ』
「……そうですか」
小さくため息を吐き出す音が聞こえた気がした
交錯していた視線をすぐに逸らした烏丸君は
本部へと歩き出した
彼の後をついていくのは気まずく感じて
ベイルアウトするかと考えたけど今ベイルアウトしたら
宇佐美さんのいる部屋へ飛ばされるだろう
もし彼が通信を切らず宇佐美さんも聞いていたら
きっと気を使わせてしまう
烏丸君に限ってそんなことはないと思うけど
もしもを考えたらベイルアウトできない
烏丸君の背中が見えなくなってから戻ろうと
その場に座り込んだ
自分の視界に映るのは先ほどまで蹴飛ばしていた石や
踏んでいた砂利
ほんの一瞬でいい
一瞬だけでもこの世界から離れた場所に行きたくて
手で耳を塞いだ
玉狛第一との防衛任務が終わりスマホを開けば
隠岐からのメッセージ
夏祭りについての話だった
今年の帰省は
あまり長く実家に残らないようにするとの話だった
防衛任務のことを考えるとスカウト組も大変である
8月5日の午後18時
三門市の中でも特に大きな夏祭りの日だ
任務も他に用事もなく行けると返事を返した
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作者名:lei | 作成日時:2023年4月28日 13時