過去（２） ページ10
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それでも毎日、宛てがわれた部屋で息をひそめて過ごしていた私の無色な日々に初めて色が付いたのは、そこに居候してから半年後のある日。
彼の妻が、友達と一週間旅行に行くことになった。
いつものように私が夕食を用意し、入浴を済ませて部屋へ戻り、寝ようとベッドへ入った頃。
突然ノックされたドアを見遣ると、音を立てないようにゆっくりと開かれたそこから従兄弟が顔を出した。
ああ、ごめん。寝るところだった？と笑みを浮かべると、落とされた部屋のあかりも気にすることなくそのままに、私のいるベッドに近付いてきた。
どうかしましたか、と声を掛けてすぐさま身体を起こすも、心臓はどきどきとうるさく変に緊張していた。
こんな時間になんの用だろう。用意した夕食が不味かったとか、何か不手際があって、それを咎めに来たのだろうか。
そんな建前を考えていながら、頭の奥の方で警鐘が鳴っているのに気付いたのは、スプリングが軋んだ音によって、その人がベッドに腰掛けたと理解した瞬間。
“俺はまだ寝るには早いと思うけど？”
暗闇に慣れた目にしっかりと映りこんだ、不意に伸びてきた手を、けれどもかわすことなんて出来なかった。
狭い部屋の中、壁際に置かれたベッドの上に逃げ場なんてどこにもない。
その手に肩を掴まれたと思うと、体重をかけて押し倒される。私の上に馬乗りになったその人の、ぎらぎらと鋭い眼光の中に、確かな劣情を見つけてしまった。
頭の奥では変わらずにがんがんと警鐘が鳴っている。
はく、と吐き出した息はその人の唇によって飲み込まれてしまう。
無遠慮に服の中に入り込んだ手が不規則に肌の上を這って、形容し難い感覚と恐怖に襲われる。
抵抗しようにも手は固く押さえつけられていて、足は勿論動かない。
じわり。
色の無かった私の世界に、ただひとつ、その存在を主張するような黒が滲む。
じわり、じわりと、水に落とした絵の具が広がっていく様に、心を蝕んで闇色に染めていく。
頭上で聴こえる荒い息が、鳴り続ける警鐘が、視界を覆う塩辛い波が、私をその闇のなかに閉じ込めている。
この日からその人は、彼の妻が旅行から帰ってくる日まで、毎晩私の部屋に訪れた。そして必ず私に欲を放っていった。
私は抵抗すらしなくなって、うつ伏せの状態でシーツを固く握り締めながら、唇を噛み締めて、ただひたすらに日が昇るのを、その地獄が終わるのを待っていた。
＿＿＿＿＿＿私は、汚い。
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近衛（このえ）(プロフ) - ごしえさん» 初めまして、嬉しいコメントありがとうございます(´；ω；`)そう言って頂けると、色々と余計なことを考えずに物事に専念出来そうです。暇な時や私生活が落ち着いた時にぽつぽつ更新していきますので、どうかあたたかく見守ってやってください。ありがとうございました！ (2018年9月14日 8時) (
レス) id: c481c3e57b (このIDを非表示/違反報告)
ごしえ(プロフ) - お初です、失礼します。作者様の作品はお話だけではなく言葉の使い方やシリアスな世界観、夢主やキャラクターの描写がすごく繊細で大好きです。更新は作者様の作品なのですから作者様の無理のないペースで書いてください^ ^レポート頑張って！ (2018年9月13日 12時) (レス) id: 7d39465185 (このIDを非表示/違反報告)
近衛（このえ）(プロフ) - ANAさん» 面白いと言って頂けて嬉しいです！まだ書き始めですが、既に薄暗い要素ばかりになっているのでかなり人を選ぶ内容かと思いますが…。更新頑張ります(*^ω^*) (2018年8月1日 9時) (レス) id: c481c3e57b (このIDを非表示/違反報告)
近衛（このえ）(プロフ) - 戸木さん» 繊細で詩的だなんて……嬉しいコメントありがとうございます(´；ω；`)楽しみにして頂けて光栄です、更新頑張ります(^-^) (2018年8月1日 9時) (レス) id: c481c3e57b (このIDを非表示/違反報告)
ANA - 面白いです！更新頑張ってください！ (2018年8月1日 9時) (レス) id: 759c29c556 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：uuu | 作成日時：2018年7月28日 15時
