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急いで立ち上がった弾みに、半分まで残っていた缶ビールが倒れた。
「あ、」
溢れたビールは彼の足元に勢いよく伸びて、そのまま真っ白なスニーカーにシミを残した
「す、すいません。あ、えっと、죄송합니다」
焦って日本語と韓国語がごちゃ混ぜになりながら、自分でもよくわからず彼のスニーカーに手を伸ばしていた
「あー、大丈夫ですよー。スニーカーいっぱいありますから 笑」
嘘だ、私ならちょっと態度に出ちゃうくらいイラっとする。
「えっと、弁償します。どうしよう、今手持ちからしかなくて、足りますか?」
急いでカバンから財布を出して、
本当は持ってるんじゃないかとか思われたくなくて
ぱかっと開いた財布を全部見せた。
「そんな見せてこられても困る 笑 本当に大丈夫、」
口を大きく開けて笑いながら、ビールで濡れたベンチを袖でふいた。
「なにやってるんですか!」
「ちょっと話、しませんか」
「へ、」
「俺も、俺は頑張ってる〜って思いたくて 笑 仲間見つけた気分なんです 」
「でも、」
「いいじゃん。ね 笑」
私の腕を取りもう一度ベンチに座らせると勝手にペラペラと話し出す彼はどこか頭がおかしいのかと思うほどだった
そのまま何時間話しただろうか、
顔もちゃんと見えない見ず知らずの外国人と話すなんて日本にいた頃じゃ考えられないと思いながらも、
自分の話をしながらも、ちゃんと私の話を聞いてくれる彼のペースに自然とのってしまう
「本当、私たち頑張ってますね〜!」
「そうだよー、わからないやつは馬鹿だと思ってればいいんだって!」
「ですよねー!そうなんですよ!・・・そうなんですよね、」
ああ、馬鹿、急に理性が戻っちゃってダメだ
「どうした?」
「・・・そうなはずだって、思てたらいいのに。こんな風になって、」
「うん、」
「・・・なんか自分がすごく、情けないんです 笑」
「・・・うん、」
『俺も』
そう小さく呟いた彼もまた私と同じようだった
沈黙の中空はちょっとずつ明るくなってきて、
ランニングするおじいちゃんの朝は早いな、なんて思った
「今日はありがとうございました。なんかスッキリしました」
さっきのさっきで、すこしだけこっぱずかしい
「こちらこそ〜」
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Mui(プロフ) - え、すきです...更新楽しみにしてます! (2018年6月21日 23時) (レス) id: 236489bd45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:● | 作成日時:2018年6月21日 23時