35 ページ34
今目の前にいる彼は何を言っているだろうか。
考えなければいけないのに、この現状を冷静に分析しようとしている自分がいた。
「えっと、あの、なんて言ったらいいか、」
視線が右往左往しながら揺れる。
焦点が定まらないわたしの視線に、彼もまた気づいたのか、私の腕をそっと掴んだ。
「好きだよA」
だから、それが何かが私にはわからないのだ。
「お前が好きだ、ずっと好きだった、これからもずっと好き」
放心としながらも彼の肩越しに、息を上げたテテの姿が見えた気がした。
遅めに起きた日曜日の朝は、びっくりするくらいの快晴で飛行機雲が長く長く伸びていた。
溜まっていた洗濯物を洗濯機にかけて、ソファに寝転んだ。
かけていた眼鏡をとり、目を瞑った。
もう一度目を開け、時計を見ると40分ほど寝ていたようだった。
もう一度眼鏡をかけ直し、ソファから起き上がる。
お風呂場にある洗濯機の前に膝を抱えて座り、回る洗濯機を眺めた。
白いシャツが何度も何度も同じところを回っている。
ふいに立ち上がり、玄関を出た。
何をやっているんだろう。
なんだか今日は何も考えずにいたい。
思いに素直になって、何にも逆らわずにいたい。さん気分だった。
オートロックの自動ドアを出ると、眩しい光に眉間にシワがよる。
「・・さむい」
コートを忘れていた。
大き目の白の長袖にジーパンにサンダル、
冬にする格好じゃない私を、散歩中の老人が凝視していた。
そのまま歩き出す。
寒い、でもなんだか止まれない。
何処に行こうか、このまま歩き続けたらいつか何処かにたどり着くだろうか。
いいや、この旅にゴールなんてない。
目標がないこの旅に、歩むべき価値はあるんだろうか。
曲がり角を曲がったところで、いきなり現れた彼に驚いた。
コートの紐が随分左に寄っていて、焦ってきたようだった。
「・・・どうしたの？」
「はぁはぁ、Aに言いたいことあって
・・・寒くないの？」
「うん、寒いよ」
「なんでコート着てないの？」
「うーん。ジミナには、内緒」
「とりあえずこれ着て」
そう言って私の肩にかけたダウンの暖かいジャケットにジミナの体温を感じた。
「ジミナが寒そう」
「俺はいいの、Aがいいのが俺はいい」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1151人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
●(プロフ) - ぐう 大好きさん» ありがとうございます！！そう言っていただけるととてもがんばれます！: ) (2017年11月22日 0時) (
レス) id: a074edcd70 (このIDを非表示/違反報告)
ぐう 大好き - 面白いです！これからも、更新頑張ってください！ (2017年11月20日 14時) (レス) id: fb77e59d2e (このIDを非表示/違反報告)
alexandrite_bbc(プロフ) - 描写がとても綺麗な文章で映画のワンシーンの様でした。とてもとても素敵なお話ですね。これからも更新楽しみに待っております(*^ω^*) (2017年11月10日 19時) (レス) id: 1a1f2fe310 (このIDを非表示/違反報告)
●(プロフ) - alexandrite_bbcさん» 惹き込まれるなんて褒め言葉が過ぎて、バンザイで喜んでます！読んで下さって本当にありがとうございます！！ (2017年11月9日 11時) (レス) id: a074edcd70 (このIDを非表示/違反報告)
alexandrite_bbc(プロフ) - 惹き込まれてしまいました。更新楽しみに待っております。 (2017年11月8日 11時) (レス) id: 1a1f2fe310 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ファサファサ翼 | 作成日時：2017年10月24日 22時
