30 ページ31
「ん……」
爽やかな匂いにゆっくりと瞼を開ける。
照明が私を眩しい程に照らした。
「やっと目が覚めましたか」
すぐ横から声が聞こえ、少し驚きながらも顔を向けるとそこにはモノクルをはずしたキッドがいた。
どうやら彼の肩に頭をのせて眠ってしまっていたようだ。
恋人がするようなその状況に恥ずかしさを感じ、顔に熱が集まるのが分かる。
きっと顔が真っ赤に染まったであろう私を見て、キッドは無邪気に笑う。
その顔は全くと言っていい程、快斗と同じだった。
『これで三本目ですね』
キッドに貰った赤い薔薇の花。
それは今日の分を合わせて二本目のはずなのに、彼はこれで"三本目"だと言った。
思い出す限り、他に赤い薔薇の花をくれた人は──────………
「快斗……?」
ポツリと零したその言葉に、彼はわざとらしく目を見開き驚いたような仕草をした。
「どうやらバレてしまったようだな」
その瞬間、目の前が真っ白い煙に包まれる。
煙が薄れる頃、そこにはキッドではなく快斗がいた。
「キッドが快斗で、快斗がキッド……??」
混乱する頭。
まさか。世間を騒がせるあの大怪盗が、快斗?
「親父が怪盗キッドで、訳あって二代目怪盗キッドやってるんだ」
冗談かと思うけれど、快斗の目は真剣そのもの。
「……詳しいことは後で話すよ」
「そっか」
そんな快斗の目は、何かを強く決心しているようだった。
「ねぇ……どうして私を盗んだの?」
話題を変えたくて、適当にそんなことを問うた。
「それは……Aに心を盗まれたから」
快斗が目を瞑る。
「その綺麗な容姿と心の優しさに惹かれて、嗚呼、Aを手に入れたいなって思ったんだ」
暫くの沈黙の後、彼は昔のことを思い出すようにゆっくりと口を開いた。
「─────………江古田高校にAが転入してきた時」
145人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
華美 - 木実こむぎ@Project KZ副隊長さん» 初期の頃からですか!ありがとうございます嬉しいです!これからも頑張ります〜 (2019年6月21日 19時) (レス) id: 06514a18af (このIDを非表示/違反報告)
木実こむぎ@Project KZ副隊長(プロフ) - うわぁぁあ( ;∀;)終わってしまった、、、初期の頃から読ませていただいてました!番外編待ってます!( ´ ▽ ` )ノこれからも頑張ってください! (2019年6月21日 18時) (レス) id: 7f9bbdec25 (このIDを非表示/違反報告)
華美 - 雨上がりのcrewさん» わわ、ありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2019年6月19日 10時) (レス) id: 06514a18af (このIDを非表示/違反報告)
雨上がりのcrew(プロフ) - すごい。。。この作品私得←これからも更新頑張ってください!! (2019年6月16日 15時) (レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:華美 | 作成日時:2019年5月7日 21時