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「怪盗キッドが、今夜、ブラックダイヤモンドを盗むという予告状を出しました」
ひとりで朝食を食べながら、テレビから聞こえてくるニュースキャスターの声に耳を澄ませた。
『怪盗キッド』
それは確か、神出鬼没の大怪盗……
宝石しか狙わないんだっけ。
怪盗キッドの話題はテレビで何度も目にしたけれど、今回の予告現場はこの家から近いみたい。
なら………そのブラックダイヤモンド、見に行ってみようかなぁ。
お味噌汁をずずっと吸って、ひとりの寂しさを少しだけ紛らわせた。
.
「おはよー、Aちゃん!」
鍵をしめた玄関から出ると、ちょうど青子ちゃんと黒羽くんも登校する時間みたいで。
……登校時間が被ってしまった。
自分の失態に頭を抱えながらも、「おはよう!」と返す。
馬鹿じゃないの、私。
この二人は、両片思いのようなものなんだから。
そう自分に言い聞かせると、また昨日の胸の痛みが再来した。
……痛い。
なんだな胸が締め付けられるような。
でも、怪我のような痛みじゃない気がする。
というか、痛いんじゃなくて苦しい……みたいな?
「Aちゃんも一緒に学校行こう!」
「いいの?」
「えっ?もちろん!いいよね、快斗!」
青子ちゃんが黒羽くんに聞くけど、当の本人はふぁぁっと大きな欠伸をしている。
「あぁ」
短くそれだけ答えた黒羽くんは、もう一度小さく欠伸をした。
それを見たら、なんだかおかしくて思わず笑ってしまった。
「……何笑ってんだ」
「ごめんごめん……なんだか欠伸してるのがおかしくて」
そう言うと、二人は顔を見合わせてふふっと微笑んだ。
「Aちゃん、初めて笑った!」
青子ちゃんのその言葉に、思わず目を見開いて驚く。
「A、転入してきてから全然笑ってなかったからよぉ」
そんなに……笑ってなかったっけ。
自分では結構笑顔でいたつもりだったんだけれど。
「……二人とも、ありがとう」
お礼を言うと、大したことはしていない、と言ってくれる二人はとても心が綺麗だと思う。
……ますますお似合いだな。
他愛のない話をしながら、江古田高校への道をゆっくりと歩いた。
──────……桜吹雪の巻き起こる通学路には、同じ制服の三人が肩を並べて、仲良さげに歩いていた。
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華美 - 木実こむぎ@Project KZ副隊長さん» 初期の頃からですか!ありがとうございます嬉しいです!これからも頑張ります〜 (2019年6月21日 19時) (レス) id: 06514a18af (このIDを非表示/違反報告)
木実こむぎ@Project KZ副隊長(プロフ) - うわぁぁあ( ;∀;)終わってしまった、、、初期の頃から読ませていただいてました!番外編待ってます!( ´ ▽ ` )ノこれからも頑張ってください! (2019年6月21日 18時) (レス) id: 7f9bbdec25 (このIDを非表示/違反報告)
華美 - 雨上がりのcrewさん» わわ、ありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2019年6月19日 10時) (レス) id: 06514a18af (このIDを非表示/違反報告)
雨上がりのcrew(プロフ) - すごい。。。この作品私得←これからも更新頑張ってください!! (2019年6月16日 15時) (レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華美 | 作成日時:2019年5月7日 21時