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工藤新一 ページ16

「新一!」

目が醒めると目の前に蘭がいた。

「なんだよ。朝から騒がしいな」

「だって、1番に言いたかったんだもん」

「あ?」

蘭が朝早くからうちに来て騒いでいる。

「今日はなんの日か分かってるの?」

「今日?」

今はGWまっただなか。
一昨日は昭和の日昨日は憲法記念日。
だから今日は

「みどりの日だろ? んで、明日はこどもの日」

「そうそう……って違う!!」

「なんだよ、おれは操作続きで疲れてんだよ。探偵には休みなんかねぇーからな」

「今日は新一の誕生日でしょ? ほら、やっぱり忘れてれる。新一いつもそうなんだから」

「え。まじ?」

「もう! お誕生日おめでとう! 新一」

蘭が笑顔で俺に言う。

「おう。サンキュ」

本当は憶えてた、毎年、初めてのおめでとうは蘭に言って欲しくて電話も出ないし、父さん母さんからも逃げてた。
特に母さんから逃げるのは大変だ。

「これ、プレゼント」

「え」

「味は、期待しないでね。でも、頑張って使ったの」

そっぽを向き、頬を赤く染める蘭。
ドキドキしながら包みを開ける。
綺麗にラッピングされてるな、流石蘭だ。
そう感心しながら、できふだけ丁寧にラッピングを剥がす。

「すっげー!」

中には良い香りのするレモンパイが入っていた。

「食って良いのか?」

「うん」

「せっかくだから茶でも飲んでけよ。ほら」

そう言って蘭とキッチンへ向かった。

⋆。˚✩

お茶を入れて蘭の前におく。

「じゃあ、いっただきまーす!」

皿にレモンパイを出して、食べる。
美味い。美味しい、うまい。

「し、新一? まずかった?」

いっけねぇ、あまりのうまさにボーッとなっている俺を心配そうに蘭が覗き込む。

「スッゲーうまい!」

「良かったー!」

蘭が嬉しそうな笑みを浮かべる。
俺も良かったぜ。来年もこうして蘭といたい。

このままでもいいけれど、できれば恋人として。

「蘭、今年もよろしくな!」

「もちろん。こちらこそよろしくね」

蘭とこうしてすごす誕生日は何回目だろうか。
あと、何回くるだろうか?
俺は蘭の隣に居続けられるだろうか?
変わらぬ関係のままがいいのか?
恋人という関係になるのか? なりたいのか?

でも、俺は、蘭が、好きだ。





ーー−−工藤新一16歳。高校1年生の誕生日であった。

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作者名:英 優美 | 作成日時:2016年8月28日 2時

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