小さな愛のお話【APH短編】

独:朝日に向かっておはよう ページ4

家の玄関、朝日の眩しくない早朝
「今日は良いことあるかもなぁ」
冷たい空気の中、口から漏れた私の言葉は白く残って消えて行く。
時刻は午前4時頃、こんな時間に起きるなんて珍しい。
というより、朝に起きるのなんて久しぶりだ。
いつもの見馴れた景色がまったくの別物に見えて、とても清々しい気分だ。
新聞屋さんのバイクの音が近付いてくる
「おはよう、Aちゃん今日は早起きだねぇ」
新聞屋さんのおじさんだ、この人また太ったな。
「おじさんも早起きだね、どうしたの？」
「ははっ、おじちゃんは仕事だよ」
「うん？あ、そっか、仕事だよね。」
「なんだい、まだ寝惚けてるのかい？顔でも洗ってきな！」
確かにまだ眠いかも、と家の中に入る。
「おじさん仕事頑張ってね」
「おう、ありがとさん！」
バイクが見えなくなるのを確認してから扉を閉め、暖かい部屋の中に避難する。

いつもより早い朝食を済ませ、歯を磨き、顔を洗う。時間があるので身だしなみに時間を掛けた。
ゆっくりと支度を済ませて、普段の5時間程早く家を出る。
通常は遅刻寸前で自転車で全力疾走だが、今日は歩く。
仕事場までの約1時間半、だんだんと明るくなっていく道を、鼻唄混じりでのんびりと歩いた。

仕事場に着くとそこには、座って資料整理をしているルートヴィヒさんの姿があった。
「おぉう…」
嬉しくて、心の奥の奥からの叫びが少しだけ漏れる。
私の憧れ、ルートヴィヒさん。
何でもできて頼りになる完璧人間のルートヴィヒさん。
彼は私の事を知らないだろうけど、私は彼をよく知っている。
せっかくだ、今日こそはルートヴィヒさんに『おはようございます』と言いたい。
彼にとっての『なんか仕事場に居る人』という私のイメージを取り払って、お近づきになりたい。
「よ、よし…！」
気合いを入れる。
「おっおは＿＿」
ガタリと、椅子の音がして慌てて扉の影に隠れてしまう。「さて、掃除でもしておくか」
「…」
一瞬心臓が止まったが、心配無い。タイミングの擦れだ。
大丈夫、私ならできる。
深呼吸を繰り返し、気を引き締める。
よし、もう一度！
「お＿＿」
バン！と、顔面に扉がぶつかる。
「やぁ、アルフレッド参上なんだぞ！」
「アルフレッドか、今日は随分と早いな」
「ああ、ちょっと早起きしたんだよ！」
たった今、乙女の顔に攻撃をしてきた彼は本当にヒーローなのだろうか。悪者に見える。いや、半開きの扉に隠れていた私が悪いのだけれど。

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