小さな愛のお話【APH短編】

仏:春のお散歩*maoさんリクエスト ページ10

ガランガラン、と鐘の鳴る音。
パンッパンッ、と合掌する音。
隣から聞こえるブツブツと呟く音。
これらの音を聞くと神社だなぁ、と改めて思う。
隣の彼が一人でどこかに歩いて行こうとするので、私も急いでお願い事を済まし、深く頭を下げ、回れ右をして歩き出す。
「見て見て、なんか売ってるよ！」
少しも歩かない内に、彼はお守りや絵馬などを販売している社務所(しゃむしょ)へと走っていってしまった。
私も思わず駆け出す。
桜の木の側にある社務所は、平日のお昼をちょっと過ぎた辺りなのに、びっくりするほど人がいない。
桜のはなびらの乗っている古い木製のカウンターには、まさしくって感じの服を着た女の子が笑顔で待っていた。
「あの、すいません」
「はい」
真面目な声で接客してくれる彼女に、私はカウンターの上を指差しておどおどと伝える。
「これと、これ下さい」
右斜め後ろの彼が気持ち悪い顔で笑っているのが、なんとなく分かった。
お財布からお金を出しながら足を後ろに勢い良く出す。
「ぁぐっ」
爪先でも踏んでやろうかと考えていたのだが、彼の痛々しい声色から察するに、脛、即ち弁慶の泣き所にヒットしてしまったようだ。
「ありがとうございました」
朗らかに笑う女の子を背中に、私は彼を連れて神社の階段を降りる。
「ごめんね、痛かった？」
ゆっくりと降りながら、手すり側の彼に謝罪をする。
「まだ少しだけ痛いけど、大丈夫だよ、ありがとう」
どう聞いても大丈夫ではない彼の様子に、改めて反省する。
私はたまらず先程買ったお守りの１つを押し付けた。
「これ、あげるから速く治してね」
「長寿祈願？」
「うん、まあ、長生きしてねってことで」
なんか違うかもしれないが、同じ健康だし大丈夫だ。
「あはは、Aちゃんも長生きしてね」
ありがとう、と微笑む彼が眩しい。
「……うぅん」
なんだか照れ臭くて、顔をプイッっと背けると、後ろからひゅうっと風が通り抜け、後から桜のはなびらが振ってきた。
そのうち一枚が鼻の頭に落ちて、くすぐったくて手で払う。
「ふふ、Aちゃん、まだついてるっ」
慌てて払うと、彼がくすくすと楽しそうに笑い、それにつられて私も笑う。
なにが可笑しいのかよくわからなくなるまで笑ったら、もう階段は全部降りていた。
少し疲れて近くのベンチに座ると、信号機の鳩みたいな音が聞こえてくる。
夕方までこうしてのんびりしていたいと考えたが、隣の彼がじっとしていないだろうと思い、重い腰を上げ立ち上がった。

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