『吸血鬼』×ウォヌ ページ10
目の前には、背が高い痩せ形の男が一人立っている。
私は突然の事で声も出せず、ただただ立ち尽くしていた。彼はこちらをジッと見つめると黙ったままゆっくり近付いてきた。
大きな木の幹に背をもたれさせ、私はゆっくり彼を見上げる。
男は切れ長のスッとした瞳で私を見つめたまま視線を合わせ、痛めてしまった脚をそっと撫でた。
「此処には初めて来たのか」
静かに響く声は低く、そしてどこか冷たかった。
私は小さく頷いて答える。
『森を抜けようとしたら…何かに襲われたの』
「何か?」
『分からないけど、黒くて速い何か。コウモリみたいな…』
そう言うと彼は少し口元を緩ませ、両手で私を抱き上げた。
私が戸惑っていると、ほらしっかり掴まれ、と言って森の中を抜けていく。
人間のようで少し違うような彼の雰囲気に、私は恐怖なのか何なのか分からない胸の鼓動をずっと感じていた。
しばらくすると古びた屋敷が見えてきて、彼は迷いなくそこに入っていく。
嘘でしょ、森の中に住んでるの?この人。
驚きで何も言えない私をよそに、彼は中へ入っていくと階段を登って空き部屋のベッドに私を寝かせた。
「はぁ、疲れた」
そう言って彼もベッドに横になる。
肩と肩が触れ合う感覚に、私は勝手に赤くなってしまった。
彼は身を固くする私に気づくと少し体を起こして、私を横から見下ろす。
横からの視線が痛くて、思わず顔を逸らして彼にそっぽを向いてしまう。
彼は無言で私を見下ろした後、そっと髪を撫でると首筋へ噛み付いた。
首に走る痛みにびくりと肩を震わせ、彼がどうしてこんな事をするのかと慌てて彼の肩に手を置いてみる。
だけど押し退けるなんて出来るはずもなく、彼は歯型だけつけると満足そうに笑って起き上がった。
「他の奴らに触れさせちゃダメだからな」
彼はそう言って綺麗に笑うと、窓から見える明るい月をじっと眺めていた。
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月の民(プロフ) - 麻里花さん» そうだったんですね!!初めてのコメントをしていただけるなんて嬉しいです♪ありがとうございます!期待に応えられるよう、頑張りますね!! (2018年4月1日 0時) (レス) id: fdbe7baf4f (このIDを非表示/違反報告)
麻里花 - お返事ありがとうございます!実はあのコメントが初めてでした!こんな暖かいコメントが貰えるなんて、、ずっと応援します!ファイティン!! (2018年3月31日 21時) (レス) id: 50fc3aee32 (このIDを非表示/違反報告)
月の民(プロフ) - 麻里花さん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけてるようで、すごくすごく嬉しいです!こうして応援していただけると励みになります…!これからも頑張りますね!!ありがとうございます♪ (2018年3月31日 14時) (レス) id: fdbe7baf4f (このIDを非表示/違反報告)
麻里花 - いつも更新お疲れ様です!私的にはドギョムのお話が凄く面白かったです!今回のミンハオ君の話も凄く面白そうだなと思いました。私は作者様の世界感が好きなので毎日欠かさず読んでます!これからも生活に支障が出ない程度に頑張ってください!楽しみにしています! (2018年3月31日 12時) (レス) id: 50fc3aee32 (このIDを非表示/違反報告)
月の民(プロフ) - ほーちゃんさん» 読んでくださってありがとうございます!!まだ途中の更新ですが、近いうちに出そうと思うので楽しみにしていてください。アンケートでハオが人気だったのと、ラプンツェルと合わせたら面白そうだなと思ってアンケートでの意見を参考にさせていただきました! (2018年3月30日 14時) (レス) id: fdbe7baf4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月の民 | 作成日時:2018年3月25日 13時