月のおとぎ話。2

4 ページ26

The8 side.


あの子の笑顔が見てみたかった。


高い高い塔に閉じ込められている、髪の長い彼女。


その存在を知ったのは、ついこの間のことだ。


＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿



「なぁミンギュ、あんな所に建物あったか？」


「ん？どれ」


「あそこの」


「…いや初めて見たな」



組織に所属する俺たちは、いわゆる裏のお仕事をたくさんしてきた。


犯罪に手を染めていると言っても良い。


日の当たらない世界で生きている。


その日も、任務遂行のために獲物を偵察していたのだが


ふと、見たことのない建物が目に入ったので気になった。


物知りなミンギュでも分からない、と言う。


あんな森の奥に、明らかに怪しい。
しかもあんなに高い場所なんて、誰かを出られないようにしているとしか思えない。


どんなやばい奴が閉じ込められているのかと、興味が湧いた。



「ハオ、何作ってんの？」


「ちょっとね。偵察用に。」


「ふぅーん…。ま、ほどほどにしろよー。明日ヤマなんだから」


「了解」



夜中に機械をいじる俺に、眠そうにホシヒョンが声をかける。


適当に返事をして手元を動かし続け、夜が明ける頃には完成していた。


小鳥に似せた機械で、目にカメラが内蔵されている。
これなら塔の中の様子も分かるだろ。


暇つぶしに、と思いながらオフの日に機械を飛ばしてみる。


中にいるのはどんな極悪人か、権力者か。


そんな事を思っていた俺は、映像を目にすると固まってしまった。



『あら、小鳥さんおはよう』



中にいたのは、髪の毛がとても長い女の子だった。


画面に映った笑顔が眩しかった事は、今でも覚えている。



『私、Aっていうのよ。お友達になってくれる？』



彼女がそう言って笑いかけるから、俺はすごく動揺して


心臓がドキドキと、いつまでもうるさかった。



こんなのは初めてだと


そう思った。


.

5→←3

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す